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92歳を指導も…Mリーグ優勝・内川幸太郎が語る、プロ雀士のリアルな生活と収入事情「麻雀業界は未成熟。自分で仕事を作るしかなかった」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/28 11:02
KADOKAWAサクラナイツのメンバーとして、Mリーグ制覇を成し遂げた人気Mリーガーの内川幸太郎
――上京したきっかけを教えていただけますか?
内川 プロになって3年目くらいのころに「このままでいいのか」という焦りが出てきたんです。所属団体の先輩である瀬戸熊直樹さん(TEAM雷電)や滝沢和典さん(KONAMI麻雀格闘倶楽部)が麻雀プロ一本で生計を立てているのを見て、「自分もああなれるんじゃないか」と。リーグ戦では順調に昇格していたので、自信があったんでしょうね(笑)。それで地元での生活に踏ん切りをつけて、身ひとつで東京に出ていったという感じです。
「俺が一番麻雀を打っている、一番練習している」
――東京での生活のアテというか、収入源はあったんでしょうか。
内川 それがまったく何もなかったんです(笑)。上京して1年間は貯金を切り崩しながら、アルバイトもせず、ただひたすら麻雀を打っていました。さすがにそんな生活は1年で破綻しましたけどね(笑)。でもそれくらい麻雀に打ち込んでいたので、負ける気はまったくしなかったです。「俺が一番麻雀を打っている、一番練習している」と本気で思っていましたから。実際、そのころに打ち手としての実力はかなり伸びたと思います。
――内川プロが考える「麻雀の強さ」の定義について教えていただけますか。
内川 麻雀にはいろいろな強さの定義があると思います。たとえば不特定多数を相手にして試行回数を重ね、トップ率が2割5分を超えるような人を強いと考えることもできる。けれどその場合、相手のレベルは上級者から初心者までさまざまですよね。もちろんプロならばそういう場でも勝たないといけないんですが、僕が考える強さの定義は、「ハイレベルな特定のメンバーの中で勝ち切ること」です。麻雀はひとりでやるものではなく対人ゲームなので、たとえばMリーグであれば、そのレギュレーションとメンバーの中で勝てる人が強い、というだけ。ごくごく当たり前というか、シンプルな話なんです。
内川が“区の麻雀教室”の先生になった理由
――上京して麻雀プロとしての腕を磨いた一方で、生活苦に陥っていたとのことですが、その後はどのように生計を立てていったのでしょうか。
内川 お金が尽きて「さすがに働かなければ」ということになったんですが、麻雀荘だけはやめておこうと。地元での経験から時間をとられる仕事なのは知っていましたし、「そもそもなんのために東京に来たんだ」という話なので。じゃあどうするかと考えて、麻雀教室だったらいいんじゃないか、と閃いたんです。麻雀荘のメンバーに比べると拘束時間ははるかに短いですから。それで新宿区を拠点に、生涯学習館という区の施設を使わせていただいて、1コマ2時間、毎日基本2コマずつ教室を開催することになりました。
――ものすごく堅実というか、真面目な働き方ですね。
内川 毎朝9時に家を出て夕方前まで働くという、サラリーマンのような規則正しい生活でした(笑)。収入も安定していましたね。今はMリーグという素晴らしい舞台がありますが、麻雀業界そのものは未成熟な世界なので、誰もが自分で仕事を作っていくしかないんです。幸い、麻雀教室の講師は僕に向いていたと思います。