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YouTubeで異例の“470万再生超”…麻雀プロ・内川幸太郎が今明かす、Mリーグ史に残る“あの役満放銃”「それでも僕は西を切ると思う」
posted2022/07/28 11:01
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Takuya Sugiyama
運命を分かつ最後の1牌、なぜ彼は煩悶の末に「西」を切り、役満・四暗刻単騎待ちに放銃することになったのか――。YouTube上で470万回以上も再生された“伝説の一局”が生まれるまでの思考と、麻雀プロとしての思いについて話を聞いた。(全2回の特別インタビュー1回目/後編へ)
――2021-22シーズンのMリーグ制覇、おめでとうございます。参入1年目(2019-20シーズン)は4位、2年目は準優勝、そして3年目に優勝と着実に階段を上っていったサクラナイツですが、Mリーグ入りした当時のことをあらためて振り返っていただけますか?
内川 初年度から優勝のチャンスはあると思っていました。他の7チームはすでに1シーズン戦っていて、僕も公式解説などの仕事を通じて選手の傾向や場の雰囲気を理解していた。対して、相手チームはこちらがどんな麻雀をするのかをよく知らない。そういったアドバンテージのある“初めてのリーグ戦”は、往々にして好結果が出るものなんです。最終的にファイナルで大失速してしまいましたが、セミファイナルは1位通過でしたからね。
まさかのドラフト指名漏れ「食事も喉を通らず…」
――サクラナイツの一員としてMリーガーになる1年前、内川プロはMリーグ発足時の7チームによるドラフト会議で“指名漏れ”の悔しさを味わいました。当時はどんな心境だったのでしょうか。
内川 「もしかしたら名前が呼ばれるかも……」という期待はありました。ただ当時は個人タイトルを持っていなかったので、選ばれなかったのも仕方ないと思います。逆にあのとき指名漏れして、Mリーガーになるためには何をすべきか、という目標がはっきりしました。とにかく個人戦のタイトルを取ろう、と。
――そして実際に2018年、所属する日本プロ麻雀連盟のビッグタイトル「十段位」を獲得しています。あのタイトルは……。
内川 「絶対に取るぞ」と思って取りました。
――さらりと口にされましたが、不確定要素が結果を大きく左右する麻雀において、「狙ってタイトルを取る」というのはすごいことですよね。
内川 あのときは十段戦にすべてをかけていて、食事もまったく喉を通らないくらいでした。映像を見てもらえればわかると思うんですけど、頬が少しこけていて、やけに「いい顔」をしているんですよ(笑)。
――当時は解説としてしばしばMリーグ中継に出演されていました。Mリーガーへの羨望やジェラシーも少なからずあったのでしょうか。
内川 ちょっと前まで一緒に放送対局で戦っていた人たちが、あれだけ注目を浴びる大舞台で楽しそうにチーム戦をやっている、というのは率直に羨ましかったですね。思い返してみると、1年目の表彰式が終わって、解説としての仕事が一段落したときが一番悔しかったかもしれません。なぜ自分は選手としてここにいないんだ、と。当時はとにかくMリーガーになるのに必死で、その先のことを考える余裕はありませんでした。