濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
団体解散の危機も…藤本つかさ休業、春輝つくしは笑顔で引退 アイスリボンのイズムと未来「プロレスは見るものじゃない、やるものです(笑)」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/05/22 11:00
5月4日の横浜武道館大会にて、引退試合を終えた春輝つくしを祝福するアイスリボンの選手たち。藤本つかさも休業前ラストマッチとなった
この試合、藤本は自分の持ち味を出しながらも「いぶき、いったれ!」という気持ちだったそうだ。いぶきは藤本、つくしがいないアイスリボンを支える中心メンバーの1人。中島、志田という強豪と闘い、それをこの先につなげてほしかった。藤本が志田にフォール負けを喫した後で、いぶきは言った。
「自分が藤本さんの仇を取ります」
藤本には、その言葉が嬉しかった。
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「この試合から“続き”が生まれたので。私はだいぶボコボコにされましたけど。それでも私は壊れませんから(笑)」
対戦した志田も、いぶきについて「覚悟したんだなって思いました」と言っていた。これまでの印象は「元気いっぱいで“いくぞー!”みたいな感じ」。そこに一本、芯が通ったと感じたそうだ。アイスリボンでは、まだまだやりたい選手がいるという。それも志田が描く未来だ。フェイスペイントは「未来へ」という文字をアレンジしたもの。藤本との闘いはひとまず最後だが、すべてにおいて未来を感じさせることが大事だった。
引退試合、つくしは藤本にいてほしかった
ハードな試合の末に敗れた藤本だが、もう一つ“仕事”が待っていた。つくしの引退試合だ。つくしはこの日、まず後輩の朝陽に勝ってタイトルを守り、チャンピオンのまま最後の試合に臨んだ。パートナーは藤本。タッグベルトも巻いた名コンビ「ドロップキッカーズ」だ。
対戦相手は高橋奈七永と星ハム子。奈七永はつくしが子供の頃からファンだった選手。レスラーになってから何度も対戦している。ハム子とはプライベートでも仲がよかった。引退を発表する会見の前日も、ハム子の家に泊まったそうだ。
いぶきに続いて、今度はつくしを支える藤本。
「とにかくつくしが主役なので。いかにつくしの姿をお客さんの目に焼き付けて、最高の形で引退してもらうか。そのことに集中してました。試合中は熱くなるので“これが最後の連携か”とか、寂しくなってもいられませんでしたね」
自分もしばらくリングから離れるのだが、それよりもつくしの引退が重要だった。引退試合のリングに藤本にいてほしいというのは、つくしの希望だ。藤本自身は、4月30日の後楽園ホール大会を最後に休業に入るつもりだった。
「私が横浜武道館に出たら、私の休業前ラストにもなる。大会の意味が“つくし引退”だけじゃなくなってしまうじゃないですか。それでいいのって、つくしとは何回も話したんですけど。つくしは“それがいいです”って」