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団体解散の危機も…藤本つかさ休業、春輝つくしは笑顔で引退 アイスリボンのイズムと未来「プロレスは見るものじゃない、やるものです(笑)」
posted2022/05/22 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
アイスリボンの取締役選手代表である藤本つかさは、3月半ばから5月頭にかけての1カ月半で48試合を行なった。プロレスの試合ペースとしては並外れている。
彼女は3月に結婚を発表。5月4日のビッグマッチ、横浜武道館大会を最後に休業に入ることになった。復帰前提ではあるが、ひとまずリングとお別れ。他団体にも藤本と対戦したいという選手は多く、次々と試合が決まっていった。尋常ではない数の試合を乗り切るだけの体力も、藤本にはあった。スタミナと回復力は業界トップクラス。デビューして14年、大きなケガで欠場したこともない。
休業前ラストマッチとなる横浜武道館大会では、星いぶきと組んで中島安里紗&志田光と対戦した。藤本は中島と「ベストフレンズ」というタッグで活躍。現在アメリカを拠点に活躍する志田とはアイスリボンの同期で「マッスルビーナス」を組んできた。つまり志田と中島は“藤本のパートナーコンビ”ということになる。
いぶきはアイスリボンの新鋭、19歳の大学生だ。3月、久々の“里帰り”をした志田が「気になる」と発言、このカードにつながった。
一度は下されていた“団体解散”の決断
この大会、この試合までにもいろいろなことがあった。昨年12月いっぱいで、何人もの主力選手が退団。戦力は相当に手薄となってしまった。加えてシングル王者の春輝つくしが5.4横浜武道館で引退することになった。そうした話が進んでいた昨年9月頃には、一度は団体解散の決断が下されたという。
「だったら私は引退しよう。そんな気持ちで1カ月くらい過ごしてました。ただ会社として団体を続けることになって。私も引退じゃなくてよかったです。休業でも1カ月半で48試合じゃないですか。引退となったらもっとだし、毎回、思い入れのある相手との試合ですよね。これはちょっと、気持ちがもたなかっただろうなって(笑)。団体としても、解散になったら行き場のない選手、プロレスを続けられない選手がいたかもしれない。それを避けられたのは本当によかったです」
その後、今度は藤本の人生自体に大きな変化があった。交際していた男性にプロポーズされ、結婚。休業を決める。休業期間で「主婦をやってみたい」という気持ちもあったし、アイスリボンではスタッフに専念してバックアップに回ることになった。
「寂しさを感じる暇もないくらいハードな試合」
横浜武道館での藤本は、タッグパートナー2人の攻撃を受けまくった。盟友たちの技を体に刻み込むようだった。「寂しさを感じる暇もないくらいハードな試合でした」と中島。志田は、闘いながら藤本のタフさを再確認したという。
「(藤本は)強かったですね。打たれ強さは健在でした。休業するってことを忘れてしまうくらい絶好調で。私はやめないですよ。いつかきっと、また試合する時がくると思うので。それも含めて私たちが見せる未来です」