甲子園の風BACK NUMBER
3校初戦敗退、22失点で再燃 “21世紀枠の是非・センバツ地域枠問題”の根本は?〈聖隷クリストファー落選も無関係じゃない〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/03/29 17:03
21世紀枠で初出場を果たした只見
21世紀枠は21世紀最初の2001年から導入された。
地区大会でベスト16以上など一定の基準をクリアした上で、他校の模範になったり、困難を克服したりした高校が選ばれる。地区大会を勝ち抜いた高校と比べるとチーム力は落ちる傾向にあり、センバツで初戦敗退が続いていることなどから「廃止すべき」という意見も少なくない。
今大会も21世紀枠で出場した3校は、いずれも初戦敗退。丹生(福井)は広島商(広島)に7-22で大敗した。21世紀枠同士の対戦を除くと、2015年に松山東(愛媛)が二松学舎大付(東京)を破って以来、勝利がない。
球児も地元も観客も勝利以外の要素を求めている
センバツの意義や使命が、各地域から可能な限り力の拮抗した高校を集めて頂点を争うことにあれば、すぐにでも21世紀枠を廃止すべきだろう。しかし、球児も地元の人たちも観客も、少なからず勝利以外の要素を求めている。
只見はセンバツ出場が決まると、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングで遠征費や活動費を集めた。約2週間で目標の500万円に到達。人口わずか4000人ほどの町から聖地に向かう選手たちを支援する動きは、全国へ広がった。
只見の選手たちは大垣日大に敗れた後、周囲への感謝の言葉を繰り返した。
吉津塁主将は「一言で感謝を伝えるのは難しいくらい、たくさんの応援やご支援をいただきました。全国で通用するレベルではありませんでしたが、甲子園で野球ができる幸せを感じました。周りの方々へ恩返しする場面は、まだまだあるので頑張っていきたいです」と部員15人の思いを代弁した。
長谷川清之監督は「過疎地で高校野球の重要性をひしひしと感じる中、子どもたちは少ない人数ながらも一生懸命、甲子園と言葉に出してやってきました。同じ会津地域の皆さんへの刺激になればと思いますし、いつ、誰から見られても恥ずかしくない取り組みを続けて行きたいです」と語っていた。
21世紀枠の存在で変化した高校もある
広島商に大敗した丹生の選手たちも表情は晴れやかだった。
来田竹竜主将は「子どもからお年寄りまで地域の方々に支えられて甲子園に出られました。試合には負けましたが、プレーする姿で恩返しできたと思います。球場が盛り上がるのが楽しくて、うれしかったです」と夢の時間に浸った。
春木竜一監督は「試合展開は残念でしたが、経験は選手の財産になり、もう一度、この舞台に立ちたいと思った選手が大半だと思います。甲子園に出た高校が今年の夏にどんな戦いを見せるのか地元でも注目されます。選手たちは変わるはずです」と充実感をにじませた。
春木監督がイメージするように、21世紀枠での出場をきっかけに大きく変わった高校がある。