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「羽生の個人的な勝利だった」元祖“4回転王”ティモシー・ゲイブルが羽生結弦の“4アクセル挑戦”を絶賛したワケ《独占インタビュー》 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2022/02/22 11:15

「羽生の個人的な勝利だった」元祖“4回転王”ティモシー・ゲイブルが羽生結弦の“4アクセル挑戦”を絶賛したワケ《独占インタビュー》<Number Web> photograph by Getty Images

(左)北京五輪フリーでは4アクセルに挑んだ羽生結弦(右)元祖“4回転王”ティモシー・ゲイブル

「あれほど危険な技に責任を持ち、本気で挑戦して、残りのプログラムをほぼノーミスで滑り切ったというのはすごいこと。ぼくはきっと彼にとっては、あれが個人的な勝利だったと思っていますし、とても高く評価しています。ぼくだったら、100万ドルもらってもやらなかったでしょう(笑)。回ってみる勇気がなかったと思う。ぼくの世代のスケーターたちが冗談で、4回転アクセルをやったらどうだろうという話をしたことがあり、みんなでバカ言うな、そんなの実現不可能だよ、と言ったものでした。それほどの技にユヅは挑戦したわけです」

「ユヅの成し遂げたことは無くならない」

 羽生は後に足首の捻挫をしていたことを告白したが、ゲイブル自身も現役時代、試合で合計76回の4回転を成功させた代償は、身体に来た。

「ぼくは25歳で競技を引退しました。当時は、身体がもう治癒しなくなっていたのです。実際には最後のシーズンの前の世界選手権で、すでに限界が来ていたと思う。だから精神的にはまだまだ戦えるのに、身体が自分の求めているものを演じられなくなってきているというアスリートの気持ちが、すごく良くわかります。

 でもユヅは2014年から8年間、世界のトップを保ち続けてきて、未だにどの大会でもメダル候補です。彼がどのくらい続けていくつもりかわからないけど、未だにこれだけ強いというのは信じられないこと。彼が得た2度のオリンピック金メダル、世界タイトル、記録は無くならないものなので、誇りを持ってほしいです」

五輪で活躍したチェン、鍵山、宇野の印象は?

 今回2位だった鍵山優真、3位の宇野昌磨については、どのような印象を持ったのか。

「二人とも、すごく振付に対してきちんとした視点を持って演じているということが、とても印象的でした。どちらもとても高い技術があり、それぞれ個性を持っているところがとても良いですね。特にユウマは、まだ18歳で次のオリンピックまでの4年間でどのように成長をしていくのか、とても興味があります。ぼく自身は、一度しかオリンピックに出なかったけれど、そこで得た経験というのはとても大きい。ショウマも、前回からずいぶんと成長して大人になったように見えます」

 宇野も現役を続行していくと伝えると、嬉しそうにこう続けた。

「現在の男子は、20年くらい前の女子のような良い状況を創り上げています。それは息の長い競技キャリアを続けて、その成長、進化する過程をファンたちが目撃できるということです。クリスティ・ヤマグチ、ナンシー・ケリガン、ミシェル・クワン、マオ・アサダもそうでしたが、ファンたちが長い間、感情移入して選手のキャリアをフォローすることができるというのは、このスポーツにとって大事なことです」

【次ページ】 元祖4回転王が作ったスケーターたちの“道しるべ”

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