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バドミントン男子ダブルス初の日本人世界王者が誕生! 東京五輪に落選も“ホキコバ” 保木卓朗&小林優吾が見せた3つの進化とは
text by
平野貴也Takaya Hirano
photograph byGetty Images
posted2022/01/15 17:00
バドミントン男子ダブルスで日本人として初の世界一に輝いた“ホキコバ”。東京五輪からわずか半年で急成長できた理由とは?
小林は「右・左の組み合わせは、自分が思っていたよりも特長があり、使い切れていなかったことが分かってきました」と進化を実感している。タンコーチが就任した2019年、保木/小林は4月のマレーシアオープン、7月のインドネシアオープンで4強入り。8月の世界選手権で銀メダルを獲得と明らかに成績が向上した。
多くの副産物を生んだ小林のレシーブ強化
しかし、その後は5大会連続で初戦敗退。成績が安定しなかった。次の進化は、小林のレシーブにあった。世界ランク15位付近を停滞するなか、このままではトップ10に届かないと焦りを感じていたという小林は「僕は、どこに行っても、アタックがすごいですねと言われるけど、逆を言えば、強打で決めるパターンしかない。アタックしかない選手だとコンプレックスに感じていました」と課題を挙げた。
タンコーチからも守備の改善を促され、コロナ禍で思うように実現しなかった日本代表合宿が20年夏頃に再開すると、チーム練習後に小林がレシーブの個人練習に取り組むようになった。この効果が大きかった。
まず、小林の分まで守備をカバーしていた保木の負担が軽減され、守備時に攻撃へ移るショットを狙いやすくなった。さらには、2人で守備をしながら相手のミスを待つ戦いもできるようになった。快進撃を続けた21年下半期について、保木は次のように語った。
「優勝したデンマークオープンの2回戦で、東京五輪で金メダルの王齊麟/李洋(ワン・チーリン/リーヤン=台湾)にレシーブでも点数が取れて、うまくかわせたことが自信につながった。その大会の決勝は完全にレシーブでラリーを回して、相手が崩れたところで仕留めるパターン。攻めているはずの相手にプレッシャーがかかる展開にできました」
これまでは、攻撃に移ったら決め切らなければ勝てないペアだったが、守備で立て直すことも可能になり、戦術が広がった。試合の映像を見ていても、明らかに違う。以前は、縦並びで小林が強打、相手の返球を保木がネット前で叩く形での得点が多かったが、横に並んで互いがコート外側から右・左のフォアハンドでたたみかける場面が増えた。
また、小林の負荷も軽減された。ジャンピングスマッシュに頼っていた頃は身体に負荷がかかり過ぎ、常に故障を抱えていたが、大きな負傷なく戦えるようになり、コロナ禍で変則的に超過密日程となった21年下半期でも、安定して好成績を残せるようになった。