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「おまえたちは『投げ屋』じゃない」松坂、涌井、そして柳裕也(中日)…横浜高エース→GG賞獲得のウラにあった「小倉元部長の教え」
posted2021/12/16 17:01
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Sankei Shimbun
12月16日、東京都内で「三井ゴールデン・グラブ賞」の表彰式が行われた。言わずと知れた守備の精鋭・18名。菊池涼介(広島)や甲斐拓也(ソフトバンク)ら常連組に加えて、6名の初受賞者がいた。中日の柳裕也もその1人である。
5年目の今シーズンは最優秀防御率と最多奪三振の初タイトルを獲得。投手とは、そもそも守備に特化したポジションだと考えれば十分に受賞理由にもなるのだが、柳は「投げる」以外の能力も相当に高い。シーズン無失策。牽制球の速さやクイックモーションの精度にも定評があり、セ・リーグの有効投票数292票のうち、7割を超える206票を集めたのも守備の総合力を評価されたからだと思われる。
「小倉さんに教えてもらったことが、僕の軸」
実際、柳も「投げる」以外の技術に自信を持っており、その源流を語っている。
「小倉さんのおかげなんですよ。中学までは投げると打つだけで、守備に関しては何もやってない。高校の3年間で小倉さんに教えてもらったことが、僕の軸なんです」
横浜高校の小倉清一郎元部長。在学当時はコーチとして、主に投手を指導していたという。
「グラウンドに着いたら、まず走り込み。次にアメリカンノックをやって、そこから走者一、三塁のダブルスチール阻止の練習をやるんです。必ず。365日」
さらに日課だったのが投手と内野手の連係プレーだ。
「ただゴロを捕って、投げるだけじゃないですよ。グラウンドのマウンドと三塁線の間くらいに白線を引くんです。これがピッチャーとサードのラインだと。ここからこっちはピッチャーが捕るからサードは出てくるな。ここから向こうに転がったら、サードが出てきて捕れって。毎日やってましたから、その感覚は今でもあるんです。実際に引いて無くても、ラインが見えるんですよ」
走者二塁からのバントのケースを想定して、繰り返した練習。バント処理でもバットの角度や自分が投げた球種、相手の構えを考えて動けと教わった。
今シーズンも発揮された「小倉の教え」
反復と観察。それが生きたプレーがある。