甲子園の風BACK NUMBER
《奄美から甲子園当確》大島高ってどんなチーム? エース大野稼頭央「知らないバッターに投げる経験が少ない」「集落全体を使って鬼ごっことか」
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byTakahiro Kikuchi
posted2021/11/28 17:03
来春のセンバツ甲子園の出場を“当確”させた大島高校(奄美大島)の選手たち。その背景には“離島”ゆえの工夫があったーー
大島は奄美大島にある離島の高校である。コロナ禍のため、島外で腕試しする機会は限られている。大島は今春の鹿児島大会で3位、今夏の鹿児島大会ではベスト8に進出した。公式戦に勝ち進むことで、少ない実戦経験をカバーしているのだ。大野本人も「公式戦で投げながら、いろいろと試しています」と語る。
「疲れた時は8割くらいの力で投げたり、要所だけギアを上げたり。練習試合ができてなくて、知らないバッターに投げる経験が少ないので、公式戦で試すしかないんです」
「試合」とは「試し合い」と書く。大野を筆頭に、大島の選手たちは九州大会という大きな試し合いで、見事な収穫を勝ち取ってしまった。
松井裕樹(楽天)を彷彿とさせるエース左腕
身長175センチ、体重63キロと華奢な体格の大野だが、ストレートの球速は最速146キロに達する。縦に大きく曲がるカーブ、キレのあるスライダーにも自信を持ち、変化球だけで打たせて取る器用さと大胆さもある。
九州大会では悪天候や登板過多もあって球数が嵩んだが、コーナーに投げ分ける制球力も高い。マウンド姿は高校時代の松井裕樹(楽天)を彷彿とさせる。
どうしても大野の力量ばかりをクローズアップしてしまうが、大島は決してワンマンチームではない。3番・ショートでキャプテンを務める武田涼雅は、183センチ、80キロの強打者。準決勝、決勝ではマウンドにも上がり、ロングリリーフで好投を見せた。
4番の西田心太朗も180センチ、76キロの大型捕手で、高い打撃力と献身的なリードでチームを支えている。他にも身体能力の高いメンバーがスタメンに並ぶ。
「ミスするのは普段からですから」
その一方で、試合中に気の抜けたようなミスが続出する側面もある。大分舞鶴との試合でも、ゴロエラー、フライ落球、外野手の後逸、パスボール、振り逃げ、ベースカバー忘れ……とあらゆる守備のミスを網羅するかのような失態が続いた。
それでも、マウンドの大野は味方への苛立ちを見せることなく、淡々と投げ続ける。その点を監督の塗木に尋ねると、「ミスするのは普段からですから。やらかすのに慣れているんです」という答えが返ってきた。