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《DeNA1位》小園健太を“ドラ1”に成長させた“智弁和歌山”との3年間…野球以外の楽しみは“Netflixで韓ドラ”
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2021/10/11 18:10
ドラフトを前に、改めて高校3年間を振り返った小園健太。互いに切磋琢磨してきた智弁和歌山の優勝は大きな自信にもつながった
「春季大会は、ストレートの球速にこだわって、150キロを出すという目標設定をしていました。どのバッターにも基本的にストレートで押していく投球スタイルで、キャッチャーの虎生とも『打たれたとしてもストレートで行くぞ』と話していました」
小園は2年夏の練習試合で152キロを記録したことがあったが、「あの時は試合の中で1球しか出ていなかった。連続で出さないと意味がない」と捉えていた。
普段は多彩な変化球を織り交ぜるが、春季大会はストレート中心の配球で、決勝の智弁和歌山戦では150キロ台を数回記録した。
「春は150キロを何回か出せたのでそこは達成しました。まだそのストレートのコントロールは夏に向けての課題ですが、虎生が構えたところに行ったストレートは、智弁和歌山でもなかなか前に飛ばせていなかったので、そこは自分が成長してきている部分かなと思っています」と収穫を語っていた。
球速にこだわった理由はセンバツでの経験
以前は、「球速にはこだわらない。質を重視している」と語っていた。その小園が“150キロ”にそこまでこだわったのはなぜか。
その裏にはセンバツの経験があった。小園は2試合に登板し、14イニングを1失点に抑えたが、自身に足りないものを痛感していた。
「やっぱりストレート。変化球でアウトを取ったりはできるんですけど、勝負どころのストレートというところがファウルになったり、明らかにアベレージが低かった」
実際、センバツではスカウト陣から、「何かが悪かった時に、他の引き出しを開けて修正できる、技術と頭、両方を持っている。ゲーム映えする投手」「変化球の質が非常に高い。全体を俯瞰して余裕を持って試合を作っている」という高評価を得ていたが、物足りない部分をあえて挙げるならストレート、という見方があった。
中京大中京の畔柳亨丞や天理の達孝太らの力強いストレートも、「全国レベルのピッチャーを見てすごく刺激になりました。自分ももっとストレートに磨きをかけたい」と小園に火をつけた。
何より、プロの世界を見据えた上で掲げたテーマだった。
「卒業後は上のレベルで野球をしていくんですけど、やっぱりいいピッチャーは、ストレートが基本。そのストレートを疎かにして、変化球ばかりに頼っていたら、そこまでで終わってしまう。ストレートありきの変化球なので。春季大会で150キロを出し、それを体に覚えさせれば、アベレージが少しでも上がるかなと思ったんです」
甲子園に直接つながらない春季大会は勝敗以上に、夏と、さらにその先に向けたテーマを重視して臨んでいたのだ。