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24歳“ジェンダーと戦う女性力士”今日和に聞く、相撲と女人禁制「急に英雄視されて、それって正しいのか?と…」

posted2021/09/13 06:00

 
24歳“ジェンダーと戦う女性力士”今日和に聞く、相撲と女人禁制「急に英雄視されて、それって正しいのか?と…」<Number Web> photograph by 株式会社アイシン

2019年、英国BBCが選出する「今年の女性100人」に選ばれた相撲選手の今日和さん

text by

小泉なつみ

小泉なつみNatsumi Koizumi

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photograph by

株式会社アイシン

 自分の好きなことを夢にできない。日本の女子相撲の世界では、このようなことが現在まで起きている。

 女子相撲選手の今日和(こん・ひより)さんは2019年、英国BBCが選出する「今年の女性100人」に選ばれた。この年は環境活動家のグレタ・トゥンベリさん、職場でのヒール靴強要に異議を唱えた「#KuToo」運動の提唱者、石川優実さんが選ばれていることからも、選出者の社会的影響力の大きさがわかる。

「友だちから『日和、こんなん載ってんで』って言われて」

「友だちから『日和、こんなん載ってんで』って言われて、ネットで選出されたことを知りました。まさかの伝聞です(笑)。女子相撲をしてる子から『すごく頑張ったら今さんみたいになれるかな』と言ってもらえて嬉しかったですね」

 方言まじりに笑いながら話す今さんは、「今年の女性100人」に選ばれた同じ年に、配信の短編ドキュメンタリー『相撲人(英題:Little Miss Sumo)』の主役にもなっていた。

 もともとはミュージックビデオの題材として日本の女子相撲を撮影する予定だったイギリス人監督が、女子相撲部の稽古を見るうちに彼女たちの姿に感銘を受け、長編映画にすることを決意。その第一弾として放たれたのが、今さん主演の短編だった。予告を見るとわかるが、とにもかくにも今さんがかっこいい。

「オープニングの、海のそばで四股を踏むシーンは今でもトラウマなくらい辛かったですね(笑)。すごく風強くて砂も飛んでくるんで痛いんですよ。ドキュメンタリーといいつつ何十回と撮り直ししました。天候も悪くて、建物の屋根の下に入ったら1分後にはあられが降ってきて。試練のような撮影でしたけど、でもそれぐらい熱意のある人じゃなきゃ女子相撲の映画を作ろうとは思わないんだろうなって」

 立命館大学を卒業した今さんは2020年4月、アイシン精機株式会社(現 株式会社アイシン)に入社。創部69年の名門相撲部で初となるたった1人の女性部員として、社会人相撲の道を歩んでいる。それも募集があったわけでなく、今さん自ら会社に頼み込んで切り拓いた道だ。

女子相撲にプロはない

「男子の場合、実力があれば実業団や大相撲で活躍できますが、女子にはそういう環境がありません。でも私は卒業後も相撲がやりたかったので、立命館大学OB、日本女子相撲連盟役員の尽力も得て、同社初の女子部員としての入部許可と採用試験の機会を得ました。女子の場合、何かとこちらからアクションを起こさないと環境が変わらないところはあると思います」

【次ページ】 「大相撲の女人禁制をどう思いますか?」と聞くと…

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