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“50本塁打&128打点”ペースの大谷翔平はベーブ・ルースと“タイプが似てる”? 「元祖二刀流の最盛期」はどれだけスゴかったのか
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/05/28 11:02
日本人歴代最速ペースでホームランを量産している大谷翔平
1917年までは「投手・ルースの全盛期」、1920年からは「打者・ルースの全盛期」になるので、二刀流はルースが投手から打者へ移行する過渡期に実現した。だから、1918年と1919年の二刀流ルースの成績には、打者に完全転向する過程が如実に現れており、投手・ルースが1918年から1919年にかけて成績を下降させているのと反比例して、打者・ルースは成績を急上昇させている。
▽1918年と1919年の「二刀流」ルースの投打の主要三部門成績
1918年 13勝/防御率2.22/40奪三振&打率.300/11本塁打/61打点
1919年 9勝/防御率2.97/30奪三振&打率.322/29本塁打/113打点
勝ち星や打点はチームメイトの成績にも大きく左右されるのでルースが「どんな選手だったのか?」を正確に反映した数字ではない。たとえば、投手・ルースはこの2年間で計299.2イニングを投げており、奪三振率は2年平均2.1とかなり低く、「打たせて取る」タイプだったことが分かる。打者・ルースも、この2年間で計23三塁打&13盗塁しており、「脚を使える」選手だったと読み取れるだろう。
大谷とルースの間に100年もの時代の差があり、両者を比較することがナンセンスだという前提であえて書くと、ルースは投手としては三振もあまりとらない「大谷とは違うタイプ」で、打者としてはホームランを打てる「大谷と似たタイプ」の選手だったのかもしれない。
大谷が超えるべき「二刀流のベストバージョン」
大谷のMLBにおけるベストシーズンは今のところ、彼が新人王となった2018年で、投打の主要三部門の成績は、4勝/防御率3.31/63奪三振&打率.285/22本塁打/61打点だった。これまたナンセンスを承知で書くと、奪三振では二刀流・ルースのどのシーズンよりも上で、本塁打は1918年(ルースの二刀流1年目)よりも上だった。とすれば、目指すは1918年の投手・ルース+1919年の打者・ルースの「上」。二刀流のベストバージョンを超えることではないかと思う。
▽二刀流のベストバージョン
13勝/防御率2.22/40奪三振(1918年)&打率.322/29本塁打/113打点(1919年)
大谷は今季、1勝/防御率2.37/45奪三振&打率.269/15本塁打/38打点という成績を残している(現地5月26日時点。以下同様)。奪三振はすでに1918年の投手・ルースを上回っているし、防御率を今のレベルで維持できれば二刀流・ルースの投手部門は超えるかもしれない。そして、何よりも注目すべきは、本塁打もこの量産ペースなら1919年の打者・ルースに追いつき、追い越す可能性が高いことだろう。