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「チームが勝っているのは嬉しいですが」 ケガから戦列復帰のレッズ・秋山翔吾が抱く“強烈な危機感”
posted2021/05/27 06:01
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
メジャー2年目の「開幕戦」を迎えるレッズ秋山翔吾の表情は、いつも以上に引き締まっていた。3月のオープン戦で左太もも裏を痛め、戦列を離脱した。その間、公式戦は開幕し、月日は経過した。メジャーの舞台に戻ってきたのは5月7日。今季30試合目だった。
「自分としては1戦目。チームの流れの中に入っていくという難しさもあると思いますし、何かしら存在感を出していかないと。ちょっと特別な気持ちになると思います」
1年目の昨季は、コロナ禍で春季キャンプが3月中旬に中断し、開幕は7月下旬までずれ込んだ。初めての異国の環境で、しかも特殊な状況だけに、心身ともに適応するのは簡単ではなかった。8月終了時点で打率は1割9分6厘。期待された1番ではなく、下位打線で起用されるようになった。だが、試行錯誤を繰り返した末、本来の広角打法を取り戻した9月は、月間打率3割1分7厘、出塁率4割5分6厘とチームトップクラスの成績を残した。終わってみれば、最後の数週間、スタメン表のリードオフマンのスペースには、ほぼ毎日、秋山の名前が記されていた。
「チームが勝っているのは嬉しいですが」
だが、秋山には、依然としてレギュラーの感覚はない。離脱中には、今季から加入のタイラー・ネークインが開幕後7試合で5本塁打を放つなど、外野手の争いが激化した。好調な打線を頼もしく感じる一方、慎重にリハビリを進める秋山にすれば、心境は複雑だった。
「チームが勝っているのは嬉しいですが、歯がゆい気持ちがあった。自分が入って、しっかり波に乗っていけるようにしたいと思います」
デービッド・ベル監督が「翔吾はすばらしいオールラウンドプレーヤー。戻って来てくれて心強い」と話す一方で、秋山の危機感は変わっていない。オフ期間には、メジャーの剛球投手に対し、より強い打球を打つための打撃改良に取り組んだ。昨季ゴールドグラブ賞で次点となった守備力、チーム屈指の走力を持つ一方、打撃への探求心に曇りはない。
「勝つか負けるかだけの勝負。どんな状況でも、全力を出しても大丈夫な状態で戻ってきたので……」
宿敵相手の目の前の試合だけでなく、チーム内での闘いが続くのもメジャー。2年目の秋山に、一切の油断はない。