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「クラブを握りたいと思うまで休もう」“鉄の意志”を持つ松山英樹も浸ったマスターズの余韻…本気モードに切り替えて挑む全米プロ
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2021/05/20 17:01
今季2戦目のメジャー大会、全米プロに挑む松山英樹
キアワアイランド・オーシャンコースで前回この全米プロが行われた2012年大会、松山は出場しておらず(そもそも当時はアマチュアだったため参加資格すらない)、会場を訪れたのは今年が初めて。前回キアワアイランドで行われた2012年大会は23歳だったロリー・マキロイが2位に8打差をつける圧勝を飾った。その前の年の全米オープンに続くメジャー2勝目で、新時代の到来を強く印象付ける大会になった。
コースは全英オープンが行われるようなリンクス風のつくりのようで、地面はそれよりもずっと軟らかく飛距離が出にくい。独特な形のバンカーや、広大な湿地帯がペナルティーエリアとして構え、目の錯覚を利用して恐怖心をあおる仕掛けがたくさん施されている。
なかでも開幕前に連日吹き荒れている強風との付き合い方が、実際の試合でもポイントになりそう。今大会のドライビングレンジでは、練習中の選手のショット弾道を追跡し、巨大な電光掲示板にデータを表示するギャラリーサービスを実施しているが、向かい風へのドライバーショットは本来300ヤードを超えるような選手でも、250ヤード前後という数字が記録されている。逆に追い風の時に松山は「5番ウッドで300ヤードを超えたりもする」というから、“大怪我”に警戒する必要もある。
そして、そんな距離感への神経を研ぎ澄ませるたびにマスターズチャンピオンも本気モードへと戻っていく。
頼もしい後輩たちの存在
今週は日本から25歳の星野陸也、22歳の金谷拓実が渡米してきた。世界ランキングでは松山に次ぐ日本勢2番手と3番手で目下、東京オリンピックの“あと1枠”の出場権を争う仲でもある。
マスターズの翌週から再開した国内ツアーの5試合で星野が2勝、金谷が1勝。新型コロナ禍で海を渡ってきた後輩たちの志は喜ばしくもある。
「日本ツアーにどのくらいの選手がいるか分からないが、僕より下の世代が勝っているのはすごく良いことじゃないですかね」
開幕2日前には金谷と9ホールを回り、前日は星野と練習場の隣の打席でショットを確かめる姿もあった。
リスタートが本格化する中で、そして次の目標に向かうあいだ、下の世代からの突き上げは松山自身にとっても刺激になりうる。世界のトップレベルに身を置いて孤独な戦いを続けながら、「絶対に負けられない」と思える仲間はいまや貴重で、これまでしばらく求めてきた存在でもある。
それでこそ、グリーンジャケットに袖を通した価値があるというものだ。
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