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【50歳でメジャー優勝】フィル・ミケルソンがゴルフ界の“永遠のヒーロー”になった理由「まるで劇場で眺める映画だ」
posted2021/05/25 06:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
全米プロ3日目が終わったとき、リーダーボードの最上段には通算7アンダーのフィル・ミケルソン、そのすぐ下には通算6アンダーのブルックス・ケプカの名前があった。
この2人がともに最終組で回る最終日のテレビ中継を「僕は(自分がホールアウトしたあと)テレビのスイッチを入れて必ず観る」と笑顔で言い切ったのは、このとき13位タイで優勝争いの圏外になりつつあったジョーダン・スピースだった。
「フィルの優勝争いは、まるでシアターだ。リードしたと思ったらトラブルに陥り、後退したと思ったら再び蘇る。そんなフィルのゴルフは、まるで劇場で眺める映画だ」
スピースが予言した通り、キアワ・アイランド・オーシャンコースのサンデー・アフタヌーンは、大観衆を狂喜させた巨大な屋外シアターと化した。
主役を演じたのは、もちろんミケルソンだ。前半を3バーディー、3ボギーのイーブンパーで回り、折り返し後の10番のバーディーで2位との差を4打に広げたと思ったら、13番、14番で連続ボギー。
長いパー5の16番では50歳という年齢を感じさせないパワフルなショットと絶妙な小技でバーディーを奪ったが、続くパー3の17番ではグリーンサイドの深いラフにボールが転がり、またしてもボギーを叩いた。
大観衆が興奮したミケルソン劇場
スピースが表した通り、「上がったり下がったり」の目まぐるしいゴルフだった。
だが、18番は興奮してフェアウエイになだれ込んだ大観衆を背中に感じながら打ち放った渾身のセカンドショットをピン5メートルに付け、危なげなくパーで収めてメジャー6勝目、米ツアー通算45勝目を達成。50歳11カ月7日での勝利は、全メジャー史上最年長優勝となった。
コロナ禍で1日1万人に制限されていたとはいえ、大勢の観衆が詰めかけたキアワは、最高の屋外シアターとなった。そんな最高の舞台で最高のパフォーマンスを披露したミケルソンは、ゴルフヒストリーを塗り替えた最高の主役となり、ゴルフ界の永遠のヒーローになった。
最終組でともに回り、2位タイに甘んじたケプカは、主役を盛り立てる最高の脇役を望まずして演じ、「フィルのゴルフは素晴らしかった」と絶賛しつつ、「今は“スーパー悔しい”し、“スーパー落胆している”」とストレートにドラマの最後のセリフを口にした。
そして、最高の主役と脇役が揃ったこのドラマには、実を言えば、開演前の序章もあった。