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「“女性スポーツ界も頑張ろう”という表現が嫌いなんです」 サッカー強豪校やドイツでプレーした下山田志帆が考える“プロの価値”って?
text by
中﨑史菜Nakazaki Fumina
photograph byGetty Images
posted2021/04/29 17:02
ドイツでプレーした頃の下山田志帆
オールマイティか、強みを伸ばすか
――そうやってオフザピッチで積極的に行動している下山田のサッカー観について聞きたい。全国トップレベルの十文字高校から、私のような初心者もいる慶應義塾大学のソッカー部女子へ、そして初めて日本以外の地でプレーしたドイツ・SVメッペン時代、そして現在のなでしこリーグ1部の舞台。いろんなピッチでサッカーをしてきたけれど、サッカー観に変化はある?
下山田:今挙げてくれた4つのチームを2つに分けるとすれば、十文字高校とスフィーダ世田谷/慶應とドイツに二分できると思います。
前者ではオールマイティであることが求められ、後者では自分の強みを伸ばす・生かすことが求められてたかな。どちらがいいというわけではないけれど、それぞれで学びがありました。
――慶應のソッカー部に入部して、最初ものすごく戸惑ってたよね。
下山田:史菜さんが戸惑いの原因でしたよ(笑)。
――すみません(笑)。
(編集註:著者の中崎氏は大学からサッカーを始めた"初心者"で、下山田がレベル差に戸惑ったという経緯がある)
ドイツではトラップを失敗しても足が速ければ……
下山田:でも、慶應では学ぶことも多かった。史菜さんのように大学でサッカーを始めた選手たちも、あんなに下手なのに強豪相手に点を決めたりしてましたもんね。できないことが多くても「できること」が明確だと、そこに特化できるんです。それは大きな気づきだった。
初心者のミスやできないことはカバーするから、その分できることを全力でやってきてちょうだい!って送り出す感じ。それは慶應じゃないと経験できなかったと思う。
ドイツも全然オールマイティじゃない。それぞれが自分の強みを出し合って、それを全力でほめ合ってる感じ。慶應での経験があったからスッとチームに入っていけました。
例えばドイツではトラップを失敗しても、その選手がめちゃくちゃ足が速くて点をとってこれるなら誰も文句は言わないんですよ。それってサッカー選手同士の関係としても人同士の関係としてもすごくいいことだと思っています。だって誰にでも、できないことはあるもん。
――これからの日本の女子サッカーを考える上でも、重要なポイントかも。ドイツで下山田は何を強みとしてチームに認識されていたの?