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花粉症にアスリートはどう対応している? スポーツドクター「ドーピングに引っ掛かる物質が多いので…」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images/Toshiya Kondo
posted2021/03/15 17:00
花粉症シーズンの到来。国立スポーツ科学センターでも対応をしているという
屋外競技が多い説は本当なのか
蒲原:エリートアカデミーがあるということで、卓球やレスリングも多かったですね。そういったバイアスを考えなければ、あらゆる競技に花粉症の選手は万遍なくいます。
――素人の考えでは、林などに隣接している施設で練習するサッカーや野球、ラグビーなどの屋外競技が発症しやすいのかなと思ったんですが、違うんですね。
蒲原:トレーニングに限らず、日常生活で外出するだけでも花粉を浴びることになりますので。練習環境によって大きく変化する、という印象はそこまで受けません。
――ちなみに食事療法的なものは……。
蒲原:花粉症の免疫を高めるため、ということは特別にはしていません。むしろ花粉症とは別の話なのですが、食物アレルギーを持っている選手も結構います。「コンディションが優れない時はこの食材を食べないでください」と伝える方が大事ですので。
アテネは10%→北京で30%超→ロンドンでは約40%!
――そもそもの話になりますが、花粉症のアスリートって、増加傾向なんですかね。
蒲原:普段、診療している際には増えている印象はないんですが、調べてみると興味深いデータもあるんです。
――それって、どんなデータですか?
蒲原:'04年アテネ五輪、'08年北京五輪、'12年ロンドン五輪の3大会の日本代表候補選手に「派遣前メディカルチェック」を実施して、全選手が受けることになっています。その時の問診で「花粉症かどうか」と聞きました。その割合を見ていると、年々増えているんですよね。
――なるほど、それは興味深いです。
蒲原:アテネの頃は10%ほどでした。それが北京の時には30%を超えるくらいになり、ロンドンでは約40%のアスリートが花粉症だと答えていました。ただこの数値の中には「花粉症だけど、治療はしていません」という選手も含まれています。その辺りは先ほども言いましたが、選手それぞれの状態を問診しながら、薬の服用などを考えることが一番大事です。
五輪を目指すアスリートも、年々花粉症が増えている。そんな中でも日々鍛錬を続けているのだから頭が下がる。
最後に余談だが、冒頭で紹介した湘南の菊池選手は、取材の数日後に行なわれたJリーグファーストステージ第2節・鹿島戦ではフル出場。12.57kmもの走行距離を叩き出した。
スギやヒノキの花粉に負けず、必死のプレーを見せる選手たち。そんな彼らを応援するのも、春先のスポーツ観戦の一興かも?
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。