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チームパシュートに大革命が起きて日本は…「団体追い抜き」なのに「追い抜かない」戦術って?
posted2021/03/07 17:03
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
平昌五輪で日本女子が金メダルを獲得したスピードスケートのチームパシュート。3人で隊列をつくり、最後尾の選手がゴールした時のタイムで争うこの種目で今季、ひそかに大革命が起きている。
チームパシュートは風圧による体力の消耗を3人で分散するため、先頭の選手を入れ替えて滑るスタイルがこれまでの“常識”だった。
縦1列のストレートラインを乱さず、3人がぎりぎりの間隔で滑るのは高い技術が必要。日本女子は世界のトップスケーターであるエース高木美帆の「個の力」を軸に、世界の頂点に立ってきた。
女子に比べると世界に後れを取っていた男子も、個人種目では世界に歯が立ちにくい中、19-20シーズンの世界距離別選手権では初の銀メダルに輝いた。日本の場合は男女とも科学班の分析に基づく先頭交代の妙技を身に着けていることが武器だった。
先頭の選手を替えず滑り切るチームが下克上?
ところが、今季はその常識を覆す新しいスタイルが世界をざわつかせた。スタートから最後まで先頭の選手を替えず、3人が連結車両のようにくっついて滑り切るチームが下克上し、強豪国も追随の姿勢を見せつつあるのだ。
発端は昨季(19-20シーズン)の世界距離別選手権男子チームパシュートだった。米国チームが最後まで先頭交代をせずに滑り、5位になった。これが各国の選手やコーチングスタッフをあっと驚かせた。なぜなら、米国の3人のメンバーが個人種目で持っている記録を鑑みると、考えられないほどの好タイムだったからだ。