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戦力に劣るリーズがなぜプレミア中位に? ビエルサの“独自戦術”を愛弟子が詳細解説【前半戦総括】
posted2021/02/20 11:01
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph by
Getty Images
鬼才ビエルサ率いるリーズ・ユナイテッドは、プレミアリーグ21試合を戦った時点で、9勝10敗2分け(得点36・失点38)で11位というポジションにいた。同じ昇格組で下位に沈むウェストブロムウィッチやフルアムと比べると、頭二つほど抜けた戦績といえる。だが、開幕直後の鮮烈な闘いぶりからはややトーンダウンし、中盤戦では苦戦を強いられる試合も多くなったという印象だ。
今回は折り返し地点を過ぎたプレミアリーグ中盤戦までで、ビエルサ率いるリーズがどのような戦いぶりを見せていたのか、荒川氏の分析を元に掘り下げていきたい。
第21節までリーズの平均ポゼッション率は57.4%、全チームのなかで4位につけている。1位マンチェスター・シティ、2位リバプール、3位チェルシーに次ぐ数字であり、2部からの昇格チームとしては異彩を放つプレースタイルを持っているといえるだろう。
目的は相手のコート内で危険な状況を作ること
リーズのポゼッションの方法は、グアルディオラ率いるマンチェスター・シティのそれとはかなり違う。マンチェスター・シティがボールを長く保持しながら相手の綻びを探すプレースタイルだと定義するなら、ビエルサのポゼッションの目的は相手のコート内で危険な状況を作り出すことにあり、時に縦に速いサッカーとも評される。
縦に速いサッカーを続けていれば通常は敵の守備に遭いボールをロストする確率も高まっていくものだ。かつリーズは主力選手の大半が2部リーグ上がり、高度なボールスキルを備えている選手はロドリゴやパブロ・エルナンデスなどごく僅かで、マンCやリバプールと比較するとプレイヤーの質は二段も三段も落ちる。
それでも高いポゼッション率を保てるのは、当連載でも度々登場している「パシージョ(pasillo)」という考え方が選手間で徹底されているからといえるだろう。では、ビエルササッカーの肝となっているパシージョとはどのようなものなのか、改めて解説したい。
パシージョとはスペイン語で「通路」という意味であり、ビエルササッカーでは「相手と味方との間に出来るパスコース」のことをパシージョと呼ぶ。