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無観客では「多額の経済的損失が…」と警鐘を鳴らす記者も ブラジルは東京五輪開催の可否をどう報じた?
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2021/01/28 11:01
リオ五輪ではネイマールらを擁した男子サッカーで金メダルを獲得したブラジル
「日本では、五輪種目のほぼすべてにおいて一定数以上の競技人口があり、競技会を観戦する人もいる。ブラジルのように多くの競技施設が無用の長物となる可能性は少ないのではないか。
とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大という問題は、五輪の歴史において一度もなかった。仮に五輪を開催し、見事に成功させたとしても、当初、予想されたような経済効果が見込めるはずがない。多額の経済的損失を乗り越えなければなるまい。その点は、前回大会開催国として非常に気の毒に思う」
ブラジル男子柔道監督の藤井裕子さんにも聞いてみた
一方、ブラジル選手団の当事者の思いはどうか。
2013年からブラジル柔道代表の技術コーチを務めて2016年リオ五輪で女子57kg級のラファエラ・シウバの優勝などに貢献し、指導力を高く評価されて2018年から女性でありながらブラジル柔道男子代表の監督を務める藤井裕子さん(愛知県大府市出身)はこう語る。
「昨年の3月中旬以降、選手たちは所属クラブが閉鎖され、自宅以外の場所では練習ができなくなった。そのせいで、一時的にモチベーションを落とした選手もいる。
それでも、代表チームは昨年7月から9月にかけて欧州では感染が比較的抑えられているポルトガルで強化合宿を行ない、その後もほぼ毎月、国内合宿を組んで懸命に調整を続けている。
ブラジル柔道連盟の役員からは『“五輪は絶対に開催する”と東京から聞いている」と言われてきた。ところが、最近になって『(感染のリスクを減らすため)出場選手の数を減らすかもしれない』と伝えられ、事態が緊迫していることを察していた。
現在の状況は、自分たちにはどうしようもない。五輪が開催されると信じ、引き続きチーム強化のためにベストを尽くすことしか考えていない」
東京、日本に対する強い期待がある
ブラジル国民の一般的な関心は決して高くないとはいえ、五輪種目をカバーするメディア関係者、そして選手団関係者からは開催地東京、ひいては日本への強い期待が感じられる。