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無観客では「多額の経済的損失が…」と警鐘を鳴らす記者も ブラジルは東京五輪開催の可否をどう報じた?
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2021/01/28 11:01
リオ五輪ではネイマールらを擁した男子サッカーで金メダルを獲得したブラジル
また五輪開催を機にリオ市内の地下鉄の路線が延長され、高速道路が整備され、旧市街が再開発されるなど、プラス面もあった。その一方で、五輪に向けた多額のインフラ投資と大会後の景気の低迷のためリオ州政府の財政が悪化し、そのことが治安の更なる悪化も招いた。
このようなリオ五輪の後遺症もあって、国民の五輪への関心は一層低下した感がある。「一度は延期された東京五輪が、あと数カ月後に本当に開催されるのか」と懸念する人自体が少ない。
夏季五輪5回現地取材のブラジル人記者の意見
それでも、かつて主要メディアの記者として夏季五輪を5回、現地取材し、2019年から「毎日がオリンピック」というサイトを主宰するマルセロ・ラグーナ記者は東京五輪開催について以下のように語る。
「日本はスポーツの国際大会開催の経験が豊富で、優れた組織力を有する。日本国内でも新型コロナウイルスの感染が再び広がっていると聞くが、世界的にみればまだましな方だろう。
外国人を含む観客を入れると感染のリスクが大きいだろうが、無観客であれば開催は十分可能ではないか」
さらに、次のように付け加える。
「五輪を愛する自分としては、是非とも開催してもらいたい。
このような困難な状況であるからこそ、大会を開催し、成功させることは五輪運動の根本精神の体現だと考える。今、このような状況で五輪を開催できる国があるとしたら、日本をおいて他にないのではないか」
感染者884万人のブラジルから見れば日本はマシ?
昨年の3月中旬以降、新型コロナウイルス感染が爆発的に広がり、1月24日時点で感染者が884万人、死者が21万7000人を超えたブラジルからみれば、日本の感染状況は取るに足らないと映る。
「今後、東京が解決すべき問題があると考えるか」とラグーナ記者に尋ねると、以下のような答えが返ってきた。