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「チャンスは決して平等ではありません」DeNA田中浩康コーチが明かす厳しいファームの競争と“期待の若手”
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/15 17:00
2年目に入るDeNAの伊藤裕季也
「プロ野球の世界は特別な世界だと思っていましたが、出てみると確かにその通りでした。僕としてはいったん離れることで広い別の世界を見ることができた実感がありますし、これは絶対プラスになるなというのが本音ですよね」
指導は「コーチであることを意識しすぎない」
田中が指導をすることを意識しはじめたのはヤクルト時代、レギュラーから外れ、徐々にベンチを温めるようになってきてからだという。
「当時の監督やコーチから『自分が指導者だったら、という目線を持っておきなさい』と言われたのがきっかけですね。結果的にその後、そのような目線で野球を見るようになるのですが、ベイスターズに移籍してからも試合に出場しつつ活かすことはできたのかなって」
泥臭いプレーで背中を見せながら、若手にアドバイスを求められれば何でも伝えた。そして2年目の2018年シーズンにはラミレス監督から「チームメイトにあらゆる助言をしてもらいたい」と“ダッグアウト・キャプテン”に指名された。こういった経緯を考えても、田中が早かれ遅かれDeNAのコーチになるのは必然だったのかもしれない。
指導については“言葉”を大切にしている。性格も特性も違う選手たちにいかに理解を促すか。当然、画一的な指導とはいかない。大切にしていることを次のように教えてくれた。
「例えば選手との距離感などコーチによっていろいろな考え方があるでしょうが、僕の場合そこは自然体で行こうと思ったんですよ」
そう言うと田中は朗らかに笑った。
「距離をとったり、また近づきすぎることなく素で対応していこうと。一緒にやってきた選手もいますし、コーチということを意識しすぎると逆に不自然になってしまう。あるがままに責任を持ってやることが自分には合っているんじゃないかと。本当に昨年は、コロナも含め貴重な経験ができましたね」
リモートでの指導も
たしかに昨年は言うまでもなく未曽有のシーズンだった。春季キャンプを終えると、ファームは教育リーグを経て自粛期間へ入ってしまう。緊急事態宣言もあり通常の指導もままならない状況。しかしDeNAではビデオ会議システムなどを駆使し、若手に対し密な指導をしていくことになる。どんなコーチングをしていたのか田中は次のように教えてくれた。