「たしかグランドに指導に行けたのは各コーチ持ちまわりで週に1回程度でした。その他の日は、DOCK（ファーム施設）のグランドや室内練習場にいくつものカメラが設置されており、それで動きを見て選手たちにフィードバックしていく日々でした。初めてのことでしたけど非常に勉強になりましたね。リモートでの指導はニュアンスも伝えにくく難しく、とにかく“言語化”して伝える大切さを痛感したんです。

　とはいえ徐々に慣れてはきましたし、個々の選手たちとしっかりと向き合うことができたのでコミュニケーションとしてプラスに働いたと思います。また選手たちばかりではなく、リモートでのコーチ陣とのミーティングには本当に時間を費やしましたね。特に同じ内野走塁の柳田（殖生）コーチとは、指導にブレが出ないよう、こまめに連絡を取り合い濃密な時間を過ごしました」

ビデオ会議システムを使い、コーチ陣から指導を受ける森敬斗　©横浜DeNAベイスターズ

田中が評価する“4人の若手”

　そんな田中と柳田がコーチとして託されたのが、有望な若手内野手たちのレベルアップだ。DeNAは二遊間の層が薄いということもあり今シーズンに向け巨人から田中俊太を獲得し、またドラフトでは大学日本代表で四番を務めた牧秀悟が2位指名を受け入団している。

　昨季ファームでは2年目の伊藤裕季也と知野直人、新人の森敬斗と田部隼人が主に二遊間を務めており、いずれも打力や走力などキラリと光る個性の持ち主たちである。田中は彼らを次のように評している。

「伊藤は新しい選手の加入もあり、相当強い気持ちでキャンプから挑むと思います。激しい競争を勝ち抜けるか、コーチとしては非常に期待しています。

　知野は、森と田部が入ってきたということで危機感というのか気持ちが強く出ていましたね。シーズン後半はチームを引っ張るような様子を見せていましたし、チャンスを掴むことのできる1年にして欲しいですね。

　森は昨年のキャンプのときと比べると継続することの大切さを知ったような気がします。おそらく自粛期間で自分と向き合い、プロの世界は地道に取り組み、継続しなければ大成できないことを経験を通し理解してくれたのではないでしょうか。

　田部は純粋な感性を持っていて、何でも吸収してやろうという貪欲な姿勢のある選手ですね。例えば昨年のキャンプのときはほとんどできなかった開脚のストレッチが、フェニックスリーグのときには床に胸がつくぐらいになっていたり、しっかりと成果を示すところがありますね」

　将来性のある楽しみな選手たちではあるものの、一軍で活躍するのはそう容易なことではないという。

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