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名将アンチェロッティが体重100kg超のロナウドから学んだこと「彼は走らなかったが2得点を決めた」
posted2021/01/16 17:01
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph by
Jan Kruger/Getty Images/AFP
話題は8年ぶりに復帰したプレミアリーグの変貌からリバプールとの因縁、エバートン復帰の理由やクラブの現状へと移っていく。だが、テーマがどれほど専門的になろうと、最後に言葉から溢れ出るのは彼の人間性であり人間への愛着である(全2回の2回目/#1から続く)。
(田村修一)
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8年ぶりのプレミアリーグで見た「変化」
――2011年にチェルシーを離れ、2019年12月にエバートンの監督としてイングランドに復帰しましたが、この間にプレミアリーグは変わりましたか?
アンチェロッティ 本当に変わったと思うのはリーグ下位のチームだ。今日の下位チームはよく組織立ち、しっかりとプレーを構築している。10年前はロングボールを前に放り込むばかりの、フィジカルな当たりが激しい典型的なイングランドスタイルだった。今はそんなチームはもうない。たとえばブライトンを見ればわかるが、素晴らしいプレーを構築してスペクタクルを作り出している。プレー哲学がよりポジティブに、より攻撃的になっている。すべてのチームが、主にセンターバックを起点にディフェンスラインから攻撃を構築しようとしている。
技術面では守備の進化が著しい。リスクを冒すより攻撃的な守備をするようになり、高い位置でのボール奪取を試みる。ハイプレスからボールを奪っての得点が増え、ピッチ前方(相手ゴールに近い位置)でのインテンシティがずっと高くなっている。
――そうしたプレーをエバートンで実践するのは、レアル・マドリーやバイエルンよりも難しくないですか?
アンチェロッティ どんなクラブであれ、そのクラブに固有の歴史と伝統は尊重せねばならない。ミランの場合はテクニカルなクオリティがベースだった。クラブもそのスタイルに合った選手を獲得しようとした。
エバートンはサポーターが選手のピッチ上のパフォーマンスを注意深く見ている。彼らは戦いを好む。そこは考慮に入れねばならないだろう。
なぜいま、エバートンなのか?
――エバートンの監督に就任したのは誰もが驚きました。野心の面で多少後退した印象はあります。
アンチェロッティ 様々な要因が重なっての就任だった。エバートンからコンタクトがあったのは、ナポリを解任された後だった。発表された翌日に、2週間前から監督を探しているという電話があった。私は仕事を続けたかったし、プレミアリーグ復帰も視野に入れていた。エバートンがその機会を提供してくれたわけだ。
――同じ街のライバルとはいえ、ほぼ1年の間にCLとプレミアリーグの両方を制したリバプールの影として存在することをどう感じていますか?