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名将アンチェロッティが体重100kg超のロナウドから学んだこと「彼は走らなかったが2得点を決めた」
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byJan Kruger/Getty Images/AFP
posted2021/01/16 17:01
エバートン監督就任で、8年ぶりにプレミアリーグ復帰を果たしたカルロ・アンチェロッティ
アンチェロッティ (躊躇いがちに)どう言ったらいいのか……。恐らく私の今日の仕事において、最高の働きをしてくれている。ナポリでは、私が息子に仕事の機会を与え、サポートするために監督に就いたと言われた。だが、彼は知性に溢れスポーツを愛している。学業も究めてドイツでスポーツ科学の博士号を取得した。最も若くしてディプロマを得たうちの1人だった。加えて経験もある。私がPSGの監督を務めたときはフィジカルコーチとして一緒に仕事をしたし、レアル・マドリーでも同じことを続けた。バイエルンではアシスタントの1人になった。
ここにも1人若いスタッフがいて、年齢は32~3歳だがとても優秀でモチベーションに溢れている。外から何を言われようと関係ない。彼は私がこれまで一緒に仕事をしたなかで最高のスタッフであるからだ。他にもポール・クレメントのような優秀な人材がいる。彼らは常に何か新しいものを求めている。
――たとえば何でしょうか?
アンチェロッティ 今はスカンジナビア諸国ではじまった膝のエレクトロミオグラフィ(神経と筋肉の機能を分析する医学の技術)に関する新たな方法論だ。筋肉に対する電気的刺激(とりわけ回復期における)の効用の研究で、最先端の技術を取り入れようとしている。
ハメス・ロドリゲスを獲得した裏側
――仕事を進めるうえで、あなたはデータや統計を重視していますね。
アンチェロッティ 練習においてそれは特に役立つ。ただ1つ言いたいのは、この夏に私がハメス・ロドリゲスを獲得したとき、誰もが彼のフィジカルコンディションに不安を抱いた。プレミアリーグのインテンシティの高さについていけないのではというのが、彼らが感じた疑問だった。では、彼がプレーした最初の4試合で、いったい何回のスプリント(時速25㎞以上で走るのがスプリントの定義)をおこなったかわかるか? たったの7回だ(笑)! それでも彼は、チームのためにゴールとアシストを重ねた。
何が言いたいのかといえば、私たちはピッチ上で選手に何を求めて何を期待するか、ということだ。私がミランの監督だったとき、クラブはブラジル人のロナウド(2007-08年シーズン)を獲得した。ミラノにやってきたとき、彼の体重は100㎏を超えていた。初戦の前に私は彼にこういった。「君を試合には出せない。体重を減らして欲しい」と。彼はこう答えた。「ピッチの上で僕に何を望むのですか? 走ることですか、それとも得点ですか? 走ることを求めるならば、僕をベンチに置けばいい。でも得点ならば、僕をピッチに送り出して欲しい」と。私は彼を起用し、彼は走らなかったが2得点を決めた。ハメスにもそれと同じことがいえる。
「私はサッカーが大好きだ」
――さきほど指揮したすべての試合を覚えていると言いましたが、監督になってから何試合を戦ったかご存じですか?