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語感はホルモン、歌詞はaikoのように……YOASOBIが明かす「曲にしてみたい“あの名作”」 

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別冊文藝春秋編集部

別冊文藝春秋編集部Bessatsu Bungeishunju

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posted2020/10/17 11:00

語感はホルモン、歌詞はaikoのように……YOASOBIが明かす「曲にしてみたい“あの名作”」<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

ボカロPとしても活躍するAyaseとシンガーソングライター・ikuraが結成したYOASOBI

Ayase 小さい時から音楽は生活の一部だったので、自分で作ったメロディをよく口ずさんだりしていました。バンドの活動を始めて、初めて1曲書き上げたのは16歳のとき。「赤い月」という曲でした。当時切実に感じていた青春時代特有の葛藤や、夢に向かうことへの決意表明のような気持ちを込めたものでした。バンド活動中、結局「赤い月」よりいい曲は書けなかったんです。

ikura その話、初めて聞きました! 私は小学生のころからギターをもって学校に行くような子でした。当時は音楽に興味がある友人が少なくて、周りからは物珍しく思われていたのかも。初めて作った曲は小学校の卒業式のときに、親友に向けてプレゼントしたものです。

aikoの歌詞のように……

――おふたりが曲を作りたくなるのはどんなときなのでしょう?

Ayase タバコを吸っているとき、トイレに行っているとき、シャワーを浴びているとき。根を詰めて作業をしたあと、ふと立ち上がって無心になっているときがいちばんいいんです。僕はメロディが最初に降りてきて、そこに歌詞をのせていきます。最近、歌詞に使えそうなフレーズを思いつくとメモをとるようにしています。aikoさんの「恋のスーパーボール」という曲に、〈日焼け止めを綺麗に洗いきれずに 夜中に腕が 夏の匂い〉という歌詞があるんです。これだけで、誰もが思い出せる情景がありますよね。そんな、普段は敢えて口には出さないけれど、皆が共有できる何気ない感情やシチュエーションを蓄えています。どんなにファンタジックな世界のお話でも、フレーズひとつで一気に聴いている人のリアルな毎日とリンクする。YOASOBIではそんな言葉を紡げればと思っています。

 新曲「たぶん」は僕自身の体験と重なるところが大きかったので、スラスラと出来上がりました。寝起きで原作小説を読んで、その瞬間にメロディとキーワードが思い浮かび、一気に作り上げられました。

ikura 私は、空気や太陽のうつろいを感じると曲を作りたくなります。夜中からだんだん白んでいく朝方や、夕日を見ながら歩いたり電車に揺られていたりするとき。これも無心になれるからでしょうか。まずどんな曲を作りたいか、テーマや使いたい歌詞から考えます。

ikuraの恋愛観を変えた1冊

――好きな小説についても教えてください。

Ayase 初めて読んだ長篇小説は「ハリー・ポッター」シリーズでした。そこからファンタジーが好きになり、小学生のときには「デルトラ・クエスト」シリーズ(エミリー・ロッダ著、岡田好恵訳、岩崎書店)に夢中になりました。もともと「仮面ライダー」などの戦闘ものが好きで、今でも漫画や映画でバトルものをよく観ます。リアルな世界の中にも、フィクションや理想を織り込んでいく僕の曲の作り方は、触れてきた作品の影響を感じますね。

ikura 恋愛小説をよく読みます。有川浩さんの『クジラの彼』(角川文庫)は、私の恋愛観を変えた本。なかなか会えない潜水艦乗りの男性との恋を通して、恋愛において「待つ」ことのロマンを感じました。三浦しをんさんの『きみはポラリス』(新潮文庫)、こちらは形にとらわれない恋を描いた短篇集で、一見一般的ではない関係ばかりですが、ある種の普遍性があり、大好きな作品です。

【次ページ】 YOASOBIが曲にしてみたい“あの名作”

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