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語感はホルモン、歌詞はaikoのように……YOASOBIが明かす「曲にしてみたい“あの名作”」
posted2020/10/17 11:00
text by
別冊文藝春秋編集部Bessatsu Bungeishunju
photograph by
BUNGEISHUNJU
ボカロPとしても活躍するAyaseとシンガーソングライター・ikuraが結成したYOASOBIは、「小説を音楽にする」をテーマとして活動するユニットだ。2019年11月に発表された楽曲「夜に駆ける」は、TikTokなどのSNSで注目を集め、YouTubeで配信されたミュージック・ビデオは公開から半年で2500万回再生を記録した。また、横浜DeNAベイスターズの山下幸輝選手が登場曲として使っていることでも知られる。
Ayaseが切実なテーマをビビッドな旋律にのせ、ikuraが一度聴いたら忘れられない澄んだ声で奏でる。いま最注目の「物語」を紡ぐふたりの素顔とは――。(別冊文藝春秋 電子版33号より)
2人が初めて会ったのは……
――YOASOBIとしての活動を始められた経緯について、改めて教えてください。
Ayase 2019年にmonogatary.com(モノガタリードットコム)という小説投稿サイトのスタッフさんから「小説を音楽にするユニットをやりたい」とお声がけ頂いたのがきっかけです。かつてない企画で面白そうだと思いました。その後、Instagramでカバー曲の弾き語りをしていたikuraの動画を見つけて、ボーカルとして声をかけました。
ikura コンセプトを聞いたときは「一体どんなふうになるんだろう?」と想像が追い付かないところもあったのですが、Ayaseさんがこれまでに作ったVOCALOID曲を聞いて、一緒にやってみたいと思いました。
Ayase monogatary.comでは小説コンテスト(「モノコン2019」)を行っていて、大賞はショートムービーやコミック、ミュージック・ビデオなど、部門ごとに設けられた形で作品化されます。「夜に駆ける」の原作である『タナトスの誘惑』(星野舞夜著、ソニーミュージック賞受賞)もその一つです。僕も選考に携わったのですが、そもそも小説を音楽にするということ自体が初めての試みだったので、どんな小説が曲にしやすいのかもわからなくて。まずは小説単体として純粋に魅力的なものを原作にと思い、受賞作が決まりました。
ikura Ayaseさんから1曲目のデモテープをもらってようやく方向性が摑めました。初めて彼に会ったのはその後、「夜に駆ける」のレコーディングの打ち合わせのときでした。
ビビッドな表現に覆い隠された“ダークなもの”
――Ayaseさんにお訊きします。VOCALOID曲と、YOASOBIでの曲作りに違いはありますか?
Ayase 実は、作り方にはほぼ違いがないんです。VOCALOIDも、他の方への提供曲も、YOASOBIも同じです。ただ、YOASOBIでは原作小説によって、自分ひとりだけでは生まれなかったフレーズに出会えるので刺激的ですね。たとえば、「たぶん」(2020年7月20日配信。原作『たぶん』)のときも、世界観には僕がそれまで描いてきたものと重なるところがあったけれど、そこに「たぶん」という言葉を置く発想が自分にはなかった。