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コロナと気候変動とトレランの関係。石川弘樹が今も山を整え続ける理由。
posted2020/09/02 07:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Hiroki Ishikawa
「今年はここ数年の豪雨などの気象条件の変化に加え、コロナ禍の影響もあり、あちこちでトレイルの状態が悪くなっている場所が増えているように思います」
そう語るのは、トレイルランナーであり、トレイルランニングのレースのプロデュースをする石川弘樹である。トレイルとは山野の未舗装の道であり、トレイルランニングは、山野のトレイルをコースにしてランニングをするスポーツだ。
石川は、年間9レースのプロデュースに携わっているが、今年はすでに8レースがコロナ禍の影響で中止になった、残り1レースの仙台泉ヶ岳トレイルランは宮城県内在住者のみという限定にし、9月末に開催が決定した。
例年6つのカテゴリーに1000名ほどの参加者がいるものの今年は800名と減少したが、開催されることに石川は「感染者を出してはいけないので緊張をしている。その中でレースを走りたいというランナーの期待に応えたい」という。
開催の意義は非常に大きい。ひとつのレースが感染と安全を考慮した上で開催されると次への規範となり、レース開催への機運がさらに高まっていく。また、規模や開催条件などを十分に考慮したレースが開催されれば、山のトレイルが整備され、良質なコースが維持されるからだ。
レースの2~3カ月前から山に入る。
トレイルのレースはマラソンなどのロードレースと異なり、舗装された道を走るわけではない。山野を走るので「やりましょう」と言ってレース数日前に山に行き、大会を開けるものでもない。
石川は、大きな大会になるとレースの約2~3カ月前に山に入り、事前準備を行う。
「僕が携わる中で一番大きな信越五岳のレースは例年9月の2週目頃の開催ですが、7月には山に入って整備と準備をします。申請などの作業は前年の年末や年明けくらいから始まっています。
距離が160キロと長いので大雨の影響で道が崩れたり、倒木でコースが塞がれたり、毎年どこかしら新たに整備しないといけないところが出てくる。整備がどうにもならない場合は違うルートを探し、行政や森林管理署などから新たに許可をもらって整備していかないといけません」