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青山敏弘と森保一が語る最強の広島。
現在も息づくサンフレッチェの伝統。
posted2020/06/13 11:45
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
どれだけ強かったかは、数字を見ればよく分かる。
2015年シーズンを制したサンフレッチェ広島。森保一監督体制4年目となったこの年、年間勝ち点74はJ歴代1位タイで、73得点30失点はいずれもこのシーズンにおいてトップの数字であった。何と得失点差は+43。続いて多い浦和レッズを14点も引き離している。
ピッチ上でチームを取り仕切ったのが、キャプテンの青山敏弘である。中と思わせて外、外と思わせて中。攻では緩急をつけたパスを散らしながら、守では泥臭く体をぶつけながら、駆け引き上手の先頭に立っていた。
欠場したのは累積警告による1試合のみで、33試合中32試合で90分間フルに戦っている。リーグMVPにも輝いた。こう記すと1年通しての充実があったと思われがちだ。しかし内実は、いや本人の感触はまったく違っていた。
思ったように走れない、蹴れない。周囲には分かりにくい微妙な差なのかもしれないが、本調子に届いていないもどかしさはシーズン後半に入るまで続いていた。
自分が悪くても、チームが良ければ。
人一番、責任感が強く、試合に懸ける思いが強く、森保いわく「それを溜め込んでしまうタイプ」。
それまでの青山なら本調子に戻っていかないことを悩み、己を責めてもおかしくない。
だがそうはならなかった。責任感の虫が多少動いたとしても、溜め込むまでにはなっていない。もどかしくとも、自分を抑えられた。それがシーズン終盤に入っての猛チャージを呼び込んだとも言える。
青山はこう振り返る。
「あのシーズンは、チームとして強かったので、たとえ自分(の状態)が良くなくてもチームとして良ければ、何の問題もないなって思っていました。歯車の1つとして働きたかったし、むしろそれが何より大事だ、と。チームのなかで自分の強みが出せるという場面も“いつかは来るだろう”くらいの気持ちでしたね」