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歴代142個の金メダルランキングで
再確認した体操・内村航平の偉大さ。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2020/05/22 07:30
最終種目の鉄棒を終え、僅差での金メダルが決まると内村は喜びを爆発させた。会見ではベルニャエフが「コウヘイは伝説」と勝利を讃えた。
第1組は「正ローテーション」。
第1組の6人はゆか、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の順番で演技をする。この順番は「正ローテーション」と呼ばれ、最もスムーズに演技ができるローテーションとされている。
第2組の選手はミスの出やすいあん馬から始まり、最後には疲れているところで体力を必要とするゆかがある。
第3組はいきなり筋力パワーをマックスで使うつり輪から始まり、最後は緊張感の高いあん馬。第4組は跳馬から始まり、最後にきついつり輪が待っている。
演技順に関してはもうひとつ注目したいことがある。それぞれの種目ごとに出番がひとつずつずれていく方式になっていることだ。
プレッシャーによる心理的な疲労が?
予選1位の選手は最初のゆかを5番手で演技し、あん馬は4番手、つり輪は3番手、跳馬は2番手、平行棒は1番手、そして鉄棒は6番手。つまり、予選1位の選手は、最終種目で最終演技者となり、試合のトリを飾る仕組みになっている。
このため、予選1位の選手は前の選手の点数を見て演技構成を決めることも可能になる。体操では予選の点数は持ち越さないが、その代わりに別のアドバンテージがあるのだ。
リオ五輪ではこの演技順が選手の心理状況に微妙な影響を与えた。リオでの内村の予選の成績は2位で1位はオレグ・ベルニャエフ。つまり、決勝でベルニャエフは内村のすぐ後に演技をする順番だった。
2人は互いに譲らずノーミスの演技をして5種目までを終えたが、もしかすると内村の直後に演技をしていたベルニャエフには、プレッシャーによる心理的な疲労が蓄積されていたのかもしれない。