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歴代142個の金メダルランキングで
再確認した体操・内村航平の偉大さ。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2020/05/22 07:30
最終種目の鉄棒を終え、僅差での金メダルが決まると内村は喜びを爆発させた。会見ではベルニャエフが「コウヘイは伝説」と勝利を讃えた。
感動をさらに膨らませた、肩を抱き合う姿。
しびれる展開での優勝とあって、当然ながら日本人は大喜びである。
だが、物語にはまだ先があった。感動をさらに膨らませたのは、内村とベルニャエフが互いに肩を抱き合う姿だ。内村は「オレグ、お前すげーよ」とでも言うかのように、親指でベルニャエフを指し、悔しくてしょうがないはずのベルニャエフもさわやかに内村を称えていた。
余談になるが、実は内村は鉄棒でアクシデントに見舞われていた。中盤に入れている「エンドウ」という車輪技で腰を痛めていたのだ。
しかし、今回あらためて映像を見ても気づかないほど完璧に最後まで演じきっていた。表彰式で金メダルを首に掛けてもらうところで体をほとんどかがめずに首だけちょこんと曲げていたのは、鉄棒で腰を痛めていたからだ。
体操の競技方式の秀逸さ。
内村はこの他にも、'12年ロンドン五輪男子個人総合が5位にランクされ、リオ五輪の男子団体総合も16位と上位に入っていた。
3つの金メダルが軒並み上位にランクインしたのはなぜだろうか。思い浮かんだのは人々の記憶に新しいということも理由だが、やはり、彼の演技のひとつひとつが「作品」の域に達しているというのが大きな要因だろう。
だが、それだけでもない。内村がとてつもない魅力を発揮してきた背景には、体操の競技方式の秀逸さがあると思う。
五輪や世界選手権の個人総合で決勝に進出できるのは予選上位24人。予選1位から6位までが第1組、以下、予選の順位に応じて6人ずつ4組に分かれて演技を行なう。
演技の順番は予選の順位によって決まる。