オリンピック名著探訪 「五輪の書」を読むBACK NUMBER
『コマネチ 若きアスリートへの手紙』
「白い妖精」波乱の半生。
一瞬の輝きと、拭えない翳りと。
text by
後藤正治Masaharu Goto
photograph bySports Graphic Number
posted2020/05/20 07:30
『コマネチ 若きアスリートへの手紙』ナディア・コマネチ 鈴木淑美訳 青土社 新装版2008年刊 1900円+税
1976(昭和51)年、カナダ・モントリオール五輪は、女子体操選手、ナディア・コマネチの大会のごとくもあった。「白い妖精」は圧倒的な演技で10点満点を連発、個人総合優勝を果たした。
本書は、東欧・共産圏の小国、ルーマニアに育った彼女の、波乱に富んだ歳月を記した自伝的回想記である。
幼い日、体操教室と出会う。「心の内に秘めておくたち」の少女は、「ただうまくなりたい」と思って努力した。「コマネチ・サルト」や「コマネチおり」も数えきれない失敗から生まれた。国内およびヨーロッパ選手権を制して五輪へ。モントリオールは14歳の日。あまりにもはやく頂点を極めたことが波乱のはじまりであったのか。