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インターハイ中止で揺れるバスケ部。
強豪は冬モードでも、一般層は……。
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byKyodo News
posted2020/05/13 08:00
福岡第一のような学校にとって、“本番”はウインターカップである。しかし多くの学校・選手にとってはそうではないのだ。
代替案は進めど、受験もある。
この春、新任で東京の私立高校に着任したばかりの男子部のコーチは、キャプテンにLINEメッセージで中止決定を伝えた。直接話したら、泣いてしまいそうだったからだ。
「『仕方がないことですけど、正直悔しすぎます』と返信がありました。彼はバスケをするために学校に来ていたような子だし、去年スタメンとして出ていながら力を発揮できなかった悔しさを今年にぶつけるつもりで頑張っていました。『高校でバスケはおしまい』という部員もたくさんいます。言葉が見つかりません」
全国高体連は、このような3年生たちを救済するために、「時期を改めて、都道府県レベルでの大会の開催を検討してほしい」と各都道府県高体連に要請している。ただし、これから3年生たちは受験や進路決定の時期に入っていくことを考えると、実施にはさまざまな障壁が生じるだろう。
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神奈川県の進学校で男女を指導するコーチは言う。
「このまま3年生を終わらせるのは残酷すぎる。県高体連の対応を待ちながらも、何かアイディアがないかと考えているところです。
例えば、例年は下級生のみで臨む7月の地区大会や8月の私学大会を、3年生の引退試合にすることも考えています。ただ、3年生は受験モードに入っている時期なので、そこまで部活を続けようとは言えません。学校が再開した時に彼らと相談して、終わりをどこに置くかを相談できればと考えています」
「まだ終わりじゃない」は正しいが。
インターハイ中止の報を受けて、さまざまな著名アスリートたちが、高校生たちに励ましのメッセージを送っている。
「これを励みにがんばって」
「まだ終わりじゃない」
「次の目標を見つけよう」
大人からかける言葉として、これらは至極まっとうなものだ。彼らは人生が長く、時間が経てば痛みが薄れることを知っているからだ。しかし、あるラジオ番組を聞いて、はっとした。高校生3年生のリスナーが、「大人たちが言っていることはわかるけれど、僕らは目の前のことに必死で、今がすべて。受け止めることができない」と言っていた。