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インターハイ中止で揺れるバスケ部。
強豪は冬モードでも、一般層は……。
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byKyodo News
posted2020/05/13 08:00
福岡第一のような学校にとって、“本番”はウインターカップである。しかし多くの学校・選手にとってはそうではないのだ。
ウインターカップがあると信じられれば。
福岡第一はここ2年、河村勇輝(現・東海大1年)というスーパースターを中心に、主要タイトルを総なめにしている。つまり、現在の3年生は入学時からなかなか出場機会に恵まれていない。
いよいよ最終学年。自分たちも全国優勝できることを見せつけたい。そして何より、できるだけ長くコートでプレーをしたい……。そんな意気込みが絶たれた。井手口コーチは「最初の全国大会がなくなってしまったことに対する精神的な落ち込みはあるとは思う」と彼らの心境を慮りながらも、「ただ」と続けた。
「僕らは『ウインターカップがある』という希望があるから、そこまでの落胆はないと思います」
井手口コーチはインターハイ中止決定後、LINEを用いて部員たちに「大会がなくなってしまった部のことを思いつつ、僕らはウインターカップがあると信じてがんばろう」とメッセージを送った。選手たちの希望は、冬へとつながっている。
普通の公立校にとって、IH予選は集大成。
その陰で、大きな絶望の中にいるのが、冬を待たずに引退する予定だった3年生だ。
彼らにとって、インターハイ予選は集大成だったはずだ。3年間の成長の成果を発揮し、1つでも多く勝つことを目指していた大会が、突如消えた。最上級生としての公式大会を新人戦のみしか戦っていない。それにも関わらず、有無を言わさず「あなたは引退です」という事実のみをつきつけられた。
神奈川県公立高校で女子部を指導するコーチは、4月28日に県総体中止の正式決定を受け取った。
「その前からほぼ中止という雰囲気があったので、登校日の際に『覚悟をしておくように』とは伝えていました。正式決定を伝えたのはZoom(オンライン会議システム)で。昨年の主力が最上級生になり、県ベスト16を目指そうと言っていた中での中止でした。3年生は『試合やりたかったな』『私たち引退なんだな』と泣いていました」
このコーチは、彼女たちにあえて「引退」という言葉を与えなかった。「どんな形になるかはわからないけれど、必ず最後の晴れ舞台を用意する。それまではどうか、まだ現役だという気持ちで過ごしてほしい」。3年生たちは今でも、週1回のオンラインミーティングに参加し、部員主導の「オンライン朝トレ」に取り組んでいるという。