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こういう事態に何ができるのか。
スポーツクライミングの現在(いま)。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2020/04/30 11:00
いまはピークを作らないようにと指示。
10代から20代前半の若者が多い代表選手たちを預かる安井ヘッドコーチが重視しているのは、選手たちとのコミュニケーションだ。そのなかで、もっとも難しさを感じているのが、シーズンの見通しが立たないこと。
「選手たちは大会に向けてピークをつくることは慣れていても、ピークをつくらないことは不慣れ。そこが心配ですね。国内大会は日程を決められないし、国際大会はやるかもしれない。仮に今年は全大会が中止と決まれば、例年の短いオフシーズンでは取り組めない各選手ごとの課題を徹底的に強化することができます。しかし、現状では国内大会も国際大会も行われる可能性があるため、極端なことをするわけにはいかない。だから、いまはピークを作らないように指示を出しています」
4月からのW杯ボルダリングは延期になっているなか、スポーツクライミングの国際統括団体のIFSCは、7月以降の大会スケジュールを5月に、8月以降の大会スケジュールについては6月にアナウンスするとことを公表している。
W杯、世界ユースの日程が流動的に。
今季の国際大会の日程は、東京五輪が予定されていたことで、4月上旬から7月下旬までにW杯ボルダリング、W杯スピード、W杯リードのほとんどの大会が組み込まれていた。9月以降に開催予定だったのはW杯リード2大会とスピード1大会というイレギュラーな日程だったが、これが新型コロナウイルスの影響によってどう変わるのか。また、8月にはロシアで世界ユース選手権の開催が予定されているが、こちらも流動的な状況にある。
「IFSCの動向は探っていますが、蓋を開けてみるまでわからない。もしも、今シーズンの残りの大会を行うとなった場合、我々にとって一番の問題はW杯リードの代表と、世界ユース選手権の代表を決める大会を開催できていないことです」