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こういう事態に何ができるのか。
スポーツクライミングの現在(いま)。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2020/04/30 11:00
安全が担保された時期、場所で育成を。
3種目それぞれのW杯を戦う日本代表は、2月から3月に行われる3種目それぞれのジャパンカップの成績によって決まり、19歳以下の選手が出場する『世界ユース選手権』の場合は、例年なら3月と5月のユース年代対象大会の成績から選出される。
今季の国際大会が開催される場合は、W杯リード代表と、世界ユース選手権の代表を決める大会を開催する必要性があるものの、こればかりは新型コロナウイルスの収束がなければ、大会開催の目処もつけようがない。
「仮に一気に収束に向かったとしても簡単に大会は開けないんですよね。大会開催は我々の強化委員会ではなく、競技運営委員会が仕切っているのですが、公共施設を借りるための多くの日が埋まっていて自由には選べない。一方で、ある程度は事前に選手たちに開催日を知らせる必要性はある。そのジレンマや難しさがあります」
新型コロナウイルスが収束するに優ることはないが、安井ヘッドコーチは最悪の事態も見据えている。
「今年の国際大会がすべて中止になる可能性もあります。その場合には国際大会を目標にして頑張ってきた選手たちには、それに代わるものを提供したいと考えています。まだ私案に過ぎないのですが、健康への安全が担保された時期や場所で、育成の場を設けたいですね。
幸い、日本代表はボルダリングなら世界上位の顔ぶれが揃っています。高いレベルで切磋琢磨しながら、それを若い選手たちが刺激にする。もちろん、こういう事態にならないのがベストですが、そういうことも想定しています」
日本代表選手が手にした白いカード。
4月11日、日本山岳・スポーツクライミング協会は1本の動画を公開した。内容は日本代表選手たちが白いカードを手に持って、一日も早い収束を願うというもの。
例年なら日本代表選手たちは、『スポーツ国際世界平和デー』の4月6日には、W杯ボルダリングの開幕戦の地・スイスで、「発展と平和」の願いの込められた白いカードを手に記念撮影をする。
今年は叶わなかったなかでも、安井ヘッドコーチと代表選手たちのコミュニケーションから、「いまできることをやろう」と、動画のアイデアは生まれたという。
すべては、全力でふたたびクライミングを楽しめる日に向けて――。