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友・橋本真也と意地の真っ向勝負!
ヘビー級王者に獣神が挑んだ伝説の夜。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/04/26 19:00
IWGPヘビー級王者・橋本真也と戦うため、極限まで鍛え上げられた身体を見せた獣神サンダー・ライガー。
ライガーも橋本も絶好調の頃に真正面から激突した!
レフェリーは鬼軍曹とも呼ばれた山本小鉄だった。2人は教え子だ。
この時、ライガーは夏のG1クライマックス出場をも視野に入れていた。その前の4月には、両国国技館でジュニアヘビー級のオールスター戦を開くことも、すでに決定していた。
橋本は強さを前面に押し出して、序盤からパワフルな試合を見せていた。1週間前にはWARの天龍源一郎と両国国技館で対戦し、勝利している。その余勢をかって、ライガーを攻めまくっていた。
橋本がボディスラムでライガーを叩きつける。ライガーの反撃は掌底打ちと浴びせ蹴りだった。その技の効果は一時期は揶揄されたこともあったそうだが、この時の効果を見れば骨法道場に通っていたことは間違いではなかったということがわかる。それらの技が、巨漢にも十分有効であることをライガーは最初から理解していたのだ。
橋本は思いっきりのいいドロップキックでライガーを場外に吹き飛ばす。
ライガーは橋本のヒザを狙う。ヒザへのドロップキックは有効に思えた。フロントのインディアン・デスロックの態勢に、橋本は頭突きを繰り出したが、ライガーは掌底打ちで返してみせる。ライガーは橋本の腕ひしぎやジャイアントバックブリーカーにも耐えた。
試合途中から、ライガーは橋本のヒザに攻撃を絞ったようだった。
ヒザ十字固めが橋本を苦しめた。ライガーはコーナーからヒザへのミサイル式ドロップキック、そして足4の字固めというセオリー通りの攻めを続けた。
「どんなに体重差があっても、相手の重心さえ崩せれば勝てる」という信念でライガーは戦っている。そもそもライガーは、ヘビー級とジュニアヘビー級という固まった概念はなくてもいいんじゃないか、と日頃から考えていた。自分自身、体重差など関係なく、だれとでも戦えるレスラーになることが目標だったのだ。
番外戦や6人タッグマッチでスーパーヘビー級のビッグバン・ベイダーと当たって、その攻略法の一部を示していたのがライガーだった。
ヘビー級王者がジュニア王者に負けるのか!?
ライガーはライガーボムという名のパワーボムで橋本を持ち上げた。腕の太さはライガーの方が橋本よりも太かった。よくもこんなに高くと思えるほど抱え上げて叩きつけた。
コーナーからのブレーンバスター(DDT)は危険な角度で、橋本は前頭部からマットに突き刺さった。
この瞬間こそ……ヘビー級王者の大ピンチだったと思う。
ライガーはもう一度、橋本をコーナーに持ち上げるとフランケンシュタイナーに持って行った。
さらにジャーマン・スープレックスで橋本を投げた。ヤングライオン時代には、橋本からこれでフォールを奪ったこともある技である。
だが、ライガーとして放ったジャーマン・スープレックスは、ヤングライオン時代のそれ以上に圧巻だった――が、それでも橋本は立ち上がってきた!