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友・橋本真也と意地の真っ向勝負!
ヘビー級王者に獣神が挑んだ伝説の夜。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/04/26 19:00
IWGPヘビー級王者・橋本真也と戦うため、極限まで鍛え上げられた身体を見せた獣神サンダー・ライガー。
負けたライガーだが、満足気に見えた。
ライガーはコーナーに上がると橋本の後頭部にドロップキックを突き刺した。
橋本は一本背負いでこのピンチから逃れるとキックを連打した。ハイキックからミドルキック。
ライガーは劣勢を打破しようと掌底打ちに出るが、橋本は水面蹴りでライガーを倒すと、キックをぶち込んで、強引に垂直落下式のDDT。
ついに……橋本はライガーから3カウントを奪ったのだった。
自らが負けたとわかり、マットの上でフーッと大きく肩で息をしたライガー。試合前には勝って当たり前と言われていた戦いを、死闘とも言える状況で終えることになった橋本は、このライガーのしぶとさに恐れさえ感じているようだった。十分な手ごたえをつかんだのか、負けたライガーの方がむしろ満足気に見えた。
「ライガーの自信がわかったような気がする」
2人はそれぞれのベルトをもって、ファンの声援に答えた。
「ヘビー級の技は後から効いてくる。さすがIWGP王者だね。あれだけ技をきれいに決めたのにはね返されてしまう。だけども遠い存在じゃないよ。DDTは警戒していたけれど、びっくりしました。橋本は強くなっている。ボクは一生涯ジュニアですが、対戦相手にはだれが来ても構わない」(ライガー)
「ヘビー級に挑戦したいというライガーの自信がわかったような気がする。やっぱりヒザを攻めてきたね、勝負に来たなって思ったよ。浴びせ蹴りは見えたよ。でも、よくオレをライガーボムで持ち上げたな~。最後のDDTは、まさか使うとは思わなかった。オレも(ライガーが)怖かったからだろうな」(橋本)
1994年2月24日、日本武道館。
そこにはライガーが夢見た、究極の戦いがあった。