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友・橋本真也と意地の真っ向勝負!
ヘビー級王者に獣神が挑んだ伝説の夜。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/04/26 19:00
IWGPヘビー級王者・橋本真也と戦うため、極限まで鍛え上げられた身体を見せた獣神サンダー・ライガー。
まるで意地の張り合いのような試合。
試合では、予想通り橋本がウェイトの差を武器にガンガン山田を攻めまくった。キック、ソバット、叩きつけるボディスラム、キャメルクラッチ。
キックの激しい連打に山田の体がサンドバッグのように大きく歪む……山田が壊れてしまうんじゃないかと心配になるほど、橋本は容赦なく蹴りまくった。だが、山田もヤワではない。一歩も引かず、橋本の圧を受けていく。
山田の方は、橋本を首固めで丸め込んだり、アキレス腱固め、あるいはバックドロップで見事に抵抗してみせてもいた。
お互いに相手を押さえこんでも、どちらも意地の張り合いのように必死でフォールから逃れ続けて、簡単な試合決着を望まない雰囲気が濃厚だった。
山田はタイガーマスクのように体からぶつかるきれいなフライング・クロス・アタックを見せた。そして、橋本をパイルドライバーの体勢で持ち上げると、真っ逆さまに落とした。
ハッとするような危険な角度だった。
さらに、山田はコーナーからのダイナマイト・キッド張りのダイビング・ヘッドバットを決めると橋本から3カウントを奪った。
結局、20分一本勝負は、密度の濃い13分45秒になった。この短い時間の中に素晴らしい闘志が交錯し、本当に小気味いい試合になったのだ。
そして……その後の8年という時の経過は、前座のレスラーだった2人を見事に新日本プロレスのメインイベンターに変えていた。
山田はライガーとしてIWGPジュニアヘビー級王者へ。
橋本はIWGPヘビー級王者になっていた。
武道館中がどよめいた……ライガーの裸の上半身。
8年前のあの日、後楽園ホールで見た戦いがスケールアップすることは間違いなかった。
この時点で橋本は135キロ、ライガーは97キロというウェイトだった。8年前の体重差はさらに開いて38キロ差になっていたが、その心配はライガーがリングに姿を見せた時に払拭された。
ライガーはスーツで隠してしまってはもったいない、と言われていたその上半身のたくましい筋肉をファンに披露したのである。
輝くマントの下には、上半身のスーツを脱ぎ捨てたライガーがいた。
マスクからは長い2本の角が消えて、小さめの「戦闘用マスク」が獣神の顔を覆っていた。観客が一斉にどよめくと共に、「凄い……」という驚きの声が武道館のあちこちから聞こえてきた。