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北島康介、逆境と「信は力なり」。
2016年4月8日、ラストレースの記憶。
posted2020/04/08 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO SPORT
時代を背負ってきた選手たちがいて、でも必ず、いつかは第一線を退く日が来る。
退いてなお、忘れられることのない存在がある。
北島康介もまた、その1人だ。
その功績は、色あせることはない。
主だったところを記せば、2004年のアテネ、2008年の北京の2つのオリンピックの100、200m平泳ぎで2大会連続2種目制覇を達成。日本選手として史上初、平泳ぎでは世界で初めての快挙であった。
2002年10月のアジア大会200mで世界新記録を出したのを皮切りに、100、200mそれぞれで世界記録を更新した。それもまた功績の1つだ。
2000年のシドニー以来4度目のオリンピックの出場を果たした2012年のロンドン大会では100m5位、200m4位と個人種目ではメダルを逃したが4×100mメドレーリレーの第2泳者として出場し日本を1位に押し上げる泳ぎで銀メダル獲得に貢献、3大会連続メダリストとなった。
日本競泳史上初であった。
5大会連続五輪出場は潰えたが……。
これらの大会に続き、5度目のオリンピックとなるリオデジャネイロを目指した2016年、日本選手権。
北島は4月5日の100m決勝で2位となったものの、代表選考基準として定められた派遣標準記録のクリアはならず、この種目での代表入りを逃した。
残るは200m。迎えた8日の決勝は、しかし、5位。5大会連続五輪出場は潰えた。
この大会での泳ぎは、以前とは違った。
だがそれでも、最後の挑戦のレースとなった200m決勝での姿、オリンピックに挑んだ最後の泳ぎは、この日までの北島を、そして北島の強さをあらためて思い起こさせた。