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自転車界の第一人者、別府史之が語る
欧州で戦うプロサイクリストの食事術。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byGetty Images
posted2020/03/07 11:30
長年にわたって世界のロードレースを戦う別府史之。その食事法は驚くべきものだった。
食べないとすぐハンガーノックに。
――レース前日に炭水化物を蓄えたら、いざ当日はどんな食事を摂るのですか?
別府 朝食はオムレツや少量のご飯、パスタ、ジャムやハチミツを塗ったパンなどを食べます。朝食を食べ過ぎて胃がもたれてはいけないので、腹八分目に、レースの3時間前までには済ませています。何を食べるかも大事ですが、自分の体がちょうど良いと感じる程度にとどめ、食べ過ぎないよう量をコントロールすることが大切です。
――長時間走り続けるとなると、レース中の補給食も大切なのでは?
別府 そうですね。レース中はパワーバーやゼリー系のほか、カーボやシュガーなどがバランスよく入った糖質の塊のようなパワージェルを摂ります。チーム内にはマッサージをしたり、軽食を作ったり、選手の面倒を見てくれるスタッフがいるんですが、彼が作ってくれるジャムのサンドイッチなどもレース中に食べていますね。毎朝、作ってくれたものを各自好きに選んで背中のポケットに入れてレースに臨むんです。
1日の走行距離が200~250kmの長いレースでは、それも寒い時期となれば、カロリー消費がとても激しく、レース中もかなり気にしてたくさん食べていないと、すぐハンガーノック(極度の低血糖状態に陥ること)になり力が出なくなってしまいます。
だからレース中は常に食べている感じですね。例えば、塩分のきいたハムが入ったサンドイッチ、はちみつや甘いジャムだけのパンなどです。反対に暑い時期や、暑い場所でのレースでは、カリウムがたくさん含まれるバナナをよく食べます。カロリーも摂れるし、カリウムには足がつりにくくなる効能もありますからね。
100kmほど走ってから食料を補給。
――レース中に補給するタイミングも難しいのでは?
別府 その日のレースのおよそ半分くらい、だいたい100kmほど走ってから食料を補給します。普段は1時間に30gほど、レースの強度がきついときにはその倍ぐらいのカーボを摂ります。一般の方だと60gは摂りすぎでしょう。パワーバーやゼリー系のものを1時間に2つ3つ摂取するイメージですね。その朝に食べるよりも、レースの1時間ごとのカロリー摂取の方が、効率よく体の動きに合わせられるんです。
また補給するドリンクは基本的に水ですが、電解質系のものをミックスしたり、カロリーが摂れるものもあります。レースが終盤に入ってペースが速くなった時には、パワージェルとカロリーが摂れる水を一緒に摂取したりしています。