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自転車界の第一人者、別府史之が語る
欧州で戦うプロサイクリストの食事術。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byGetty Images
posted2020/03/07 11:30
長年にわたって世界のロードレースを戦う別府史之。その食事法は驚くべきものだった。
パリ~ルーベで起こる「奇跡」とは。
――1日に250km超のレースというと、4月に行われるワンデーレースのパリ~ルーベもそうですね。別府さんがちらりと登場している公開中の映画『栄光のマイヨジョーヌ』でも、あの過酷な「北の地獄」でのグリーンエッジの戦いぶりが取り上げられています。
別府 劇中でも怪我から復帰したマシュー・ヘイマンが挑みますが、パリ~ルーベは石畳の特殊なコンディションで精神的にもすごくきつい。そこで、奇跡が起こるんです。僕の中でも、あのレースは本当に特別ですよ。今まで何千人、何万人と走ってきた100年以上の歴史があるクラシカルなレース。なぜこの時代になってもまだ石畳で走るのかな、と(笑)。
それも綺麗な石畳ではなく、瓦礫のようなところを走る。あの瓦礫は新調しているけれど、わざと整然とは並べず、ただ置くだけなんです。だから3、4cmの穴があったりするので、パンクはするし穴にはまって落車したりもする。自分は平気だと思っても、前の人が転んだら突っ込んでしまいますからね。自転車だけでなくサポートカーも壊れるし、泥や埃まみれになる。しかしそれが、過去100年以上続けられてきたフランスの由緒ある特殊なレースなんです。
選手からすれば、コースがきつくて走れなかったら「道に負けている」ことになります。でも僕らは「道」に負けるのではなく、レースそのもので勝負をするのであり、パリ~ルーベは100年以上続く男と男の情熱がぶつかり合う場所。ここに魅力を感じない人はいないだろうと思います。今も続いている、ということはそこに観客や選手みんなが思う情熱が、詰まっているんじゃないでしょうか。