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なぜ日本のスケートボーダーは、
わずか数年で世界的に強くなったのか?
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byYoshio Yoshida
posted2019/12/28 08:00
左から、2012年時の増田竜万、堀米雄斗、池田大亮。幼い時から、家族や周囲の協力もあってスケートボードに親しめた世代の選手たち。
日本人がスケートボードに向いている理由。
本間氏は、競技の環境面だけでなく、スケートボードという競技の特性も日本人と相性がいい部分があると話す。
「日本には“ギークカルチャー(オタク文化)”というものがあります。これには広義の解釈では好きなモノ・コトにとことんのめり込んで、その分野では驚異的な力を発揮するとか、好きになる対象が、細かく複雑、緻密ですごく大変なことでも厭わないとかそういう意味がありますが……その要素がスケートボードのコンテストとはすごく相性がいいんです。
と言うのも、実際に乗ってもらえば分かりますが、スケートボードはものすごく不安定な乗り物で、初めて乗る人はうまく進むことすらままならないでしょう。それをくるくる回しながら跳んだり擦らせたりするので、トリックのメイクにはものすごく緻密で繊細な感覚が必要なんですよ。
もちろんすべての日本人の選手が繊細だというわけではありませんが、その辺りは諸外国と比べて日本人が優っている部分ではないでしょうか」
スケートボード競技の繊細で技術的に複雑な特性が、日本人の感覚に合っているのではないか……本間氏はこの理由と、インターネットやスマホ文化が地域を繋ぐといった時代の進化にうまく噛み合ったことで、日本人選手が世界でも勝てるようになったのではないかと分析しているのである。
真のスケートボード大国へ向けて必要なこと。
今までの業界関係者からの言葉で、日本が急激に強くなった理由が見えてきた。
では改めて問いかけてみたい。
「日本はスケートボード大国か?」
こう聞かれると、多くの業界関係者からは残念ながらまだ日本は先進国とは言えないという答えが返ってくる。確かに世界で活躍し、優勝する日本人は出てきた。しかしスケートボードの世界で真の評価を得るには、それだけでは足りないのである。
以前に堀米雄斗が、こういうことを語っていた。「コンテストも大事だが、自分の滑りを撮影することもすごく大事」と。実は、スケートボードの評価というのは、コンテストの中だけのものではなく、オリンピックの競技種目名にもなっている「ストリート」=「街中で自分の滑りを映像に収める『ビデオパート』」が重要なのである。