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館山昌平「野球は遊びの延長だった」
小中学生の怪我のリスクを考える。 

text by

谷川良介

谷川良介Ryosuke Tanikawa

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photograph bySports Medical Compliance Association

posted2019/12/20 08:00

館山昌平「野球は遊びの延長だった」小中学生の怪我のリスクを考える。<Number Web> photograph by Sports Medical Compliance Association

小中学生の指導者への新たな評価基準となる「ベストコーチングアワード」。第1回となる今年度は全国41チームの野球チームが表彰された。

手術10度を経験した館山コーチ。

 そして人一倍、自分の身体をケアすることの重要性を知る人物が、館山昌平だ。今季限りで17年間の現役生活に別れを告げ、来季から楽天二軍投手コーチとして後進の指導に当たる。

 ヤクルトひと筋を貫いたプロ野球人生は怪我との戦いでもあった。大学時代から数えると体にメスを入れたのは計10度、そのうちトミー・ジョン手術は3度を数える。そのほとんどの執刀医は古島医師が務めたという。

「自分の場合は学童野球の時に怪我をしたわけではないんです。プロの世界に入ってから、より速い球を投げる、相手を抑えるための投球を求めた結果。古島先生のデータでいえば、約10%のタイプですね。(学生時代に怪我をしていなくても)次のステージで怪我をすることもある。自分は経験があるので(リスクを)知ってますけど、子どもたち自身も周囲も骨の状態まで知っている人は少ない。指導者として勉強することも多いですが、こういった知見を広めることも大切だと思っています」

 さらに館山は、異変を感じたときの対応が怪我を大きくする分かれ目だと訴えた。指導者は判断力が備わっていない子どもたちの体格差を理解することも大切だ。

「『(骨端線が)もうなくなっちゃったね』と言われたのは32歳のとき。伸び続けていた身長が182cmで止まり、スピードもそこから落ちました。自分の身体に関して言えば、それまでは成長する、スピードが速くなる可能性があったということ。一般的に小中学生の骨年齢の差はプラスマイナス2歳と言われていますが、それ以上に差がある子もいますし、そもそも違いがあること自体知られてないケースも多い。

 体の外側だけでなく、古島先生はさらに深く骨まで見ているので、情報をいっぱい持っています。まずは何かあったらすぐドクターに自分の口で相談する。アドバイスをもらったらそれをしっかり守る。それが一番、怪我を最小限に抑えるコツなんじゃないかと思います」

「すべて遊びの延長だった」

 こういった考え方は、館山が「いい指導者に恵まれてきた」からこそ生まれるものだろう。引退した今も感謝の思いは消えない。

「文武両道を掲げていた日大藤沢高校は練習時間が短かったですし、部員100人全員で練習していたので1人でやる練習も少なかった。ベンチ入りメンバーだけで練習したのは大会前の3週間ぐらいだけ。その分、練習後や試合後は自然とリカバリーする時間もあった。先輩の山本昌さんもそうですが、長く活躍されているのを見ると、そういったサイクルは身についたのかなと思います。

 小学校時代は自分たちでサインを作っていたりと、すべて遊びの延長だった。グラウンドをいくらでも使ってよかったし、壁当てもいくらでもやってよかった。怪我をするほど追い込むことはなかったですね」

 練習時間やコーチング云々の前に、“スポーツを楽しむこと”に重きを置くことが重要なのではと話した。

【次ページ】 ドクター、PT目線の発信も。

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