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<必然のジャイアントキリング>
日本vs.アイルランド
金星を生んだ大胆な用兵。
posted2019/10/03 08:00
激闘を終え、リーチマイケルはアイルランドのFLリース・ラドックと握手を交わした。
text by

大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Naoya Sanuki
目を疑った。こんなことがありうるのか。
相手ゴール前まで攻め込んだ日本がノックオンした直後、タイムアップを告げる銅鑼が響いた。日本のリードは7点。アイルランドはラストアタックでトライとゴールを決めれば同点に追いつける。乾坤一擲の反撃を、日本は防ぎきれるか?
だがそんな興味はすぐに消え失せた。アイルランドは密集からボールを出すと、途中出場のSOジョーイ・カーベリーが、いともあっさりとボールをタッチに蹴り出したのだ。
アイルランドから見れば、7点差で終われば「惜敗ボーナス」の勝ち点1が得られる。100mを攻め返して同点に追いつけば勝ち点は2。
だが、そんな甘美なシナリオに賭けるほどの自信を、緑のジャージーは持ち合わせていなかった。むしろ頭にあったのは、途中でボールを奪われ、ダメ押しの点を奪われること。すなわち勝ち点ゼロへの恐怖だ。
過去3年間で2度のオールブラックス撃破を成し遂げ、W杯開幕時には世界ランク1位に君臨していた北半球最強国アイルランドは、そこまで計算して、敗北を受け入れた。
アンガス・ガードナー主審は長い笛を吹いた。桜のエンブレムをつけた赤白ジャージーが跳びはね、抱き合い、コブシを突き上げる。緑のジャージーが立ち尽くす。4万7813人を飲み込んだスタジアムがどよめき、揺れる。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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