才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
「40歳になっても4回転を飛びたい」
織田信成に宿るフィギュアスケート愛。
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byShigeki Yamamoto
posted2019/07/10 11:00
令和は自分の涙腺レベルを上げる時代!
表現力においては、小さい頃の写真を見返しても普通の顔で写っている写真の方が少ないぐらいいつも変な表情をしていて(笑)。生まれも育ちも大阪なので、隙あらばというところがあったんでしょうね。普段から賑やかでうるさい少年でした。
反面、昔からすごく泣き虫だったので、泣くことにも抵抗がないんです。なんでそんなに泣くん?って聞かれて初めて、自分がよく泣く方なのだと自覚しました。
悲しいことではあまり泣けないのですが、感動したり嬉しかったり、喜びですぐ泣いてしまうんですよ。今、指導をしているのですが、自分の教え子の演技が終わったら絶対に泣いてしまうと思うんです。そうしたら僕の泣き顔がクローズアップされるかもしれないじゃないですか。それは困るのでキス&クライにはアシスタントのコーチを送り出せばいいんじゃないかと思ったのですが、やっぱり僕も隣に座りたいので、令和は自分の涙腺レベルを上げるという課題の時代にしたいと思っています(笑)。
僕には子供が3人いるのですが、今までは小さかったのであまり意識していなかったんですけど、一番上がもう小学校3年生なので、学校で「お父さんまた泣いてただろう」みたいに言われたらまずいじゃないですか。だからテレビでも泣かないようにしているし、家でも子供の前では絶対に泣かないようにしていますし、落ち込むことがあってもなるべく顔に出さない。だけど、我慢している顔をしているらしくて、妻には一発でバレるんですけどね(笑)。
ただ、そういう感情が爆発するようなところも僕らしさだと思っています。
指導者として感情的にならずに。
今は指導者という立場になりましたが、気をつけていることがいくつかあります。
まず、ジャンプというのは練習では基本的に失敗するものなので、絶対に責めたりしないこと。子育てにも通じるのですが、子供の頃って小さな失敗をすごくするじゃないですか。そういうことに対しては怒らず、なぜそれがいけなかったのかというのをきちんと分かるように話してあげるようにはしています。
ただ、なんでもOKなわけではなくて、例えばフィギュアスケートができる環境というのはすごく恵まれていると思うんです。氷に乗れる感謝の気持ちとか、スケートに対して真摯に向き合う姿勢だとかは常に持っていて欲しいですし、スケートや人に対する向き合い方に問題があれば叱ることもあると思います。
人間って僕もそうなのですが、無意識に人を傷つけてしまうことがあると思うんです。誰かにとっては何でもないことかもしれないけれど、誰かにとっては傷つくこともある。だから感情的にならずに、なぜダメなのかをきちんと理解してもらえるように言うことが大切なんです。
フィギュアスケートって特殊な競技だと思います。360度からお客さんに見てもらって、しかも失敗しても頑張れって応援してもらえて、良い演技をすれば皆さんから花束をもらえる。そんなありがたいスポーツってあまりないと思うんですよ。子供たちには辛いことも悔しいこともあるけれど、それでもスケートって楽しいで!というのが、今僕が一番伝えたいことですね。
織田信成Nobunari Oda
1987年3月25日、大阪府生まれ。柔らかく美しいジャンプを武器に2005年の世界ジュニア選手権で優勝。2010年バンクーバー五輪では7位入賞。2013年の全日本選手権終了後に現役を引退し、現在はプロフィギュアスケーター、コーチ、解説者、タレントとして活躍中。2017年4月からは母校・関西大学体育会アイススケート部監督も務める。
新しいナビゲーターに俳優の田辺誠一さんを迎え、番組デザインもリニューアル。アスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。
第63回:織田信成(フィギュアスケート)
7月12日(金) 22:00~22:24
フィギュアスケート選手として2010年バンクーバー五輪7位入賞の織田信成さん。涙もろく人目を憚らずに号泣するイメージが強いですが、その裏にある涙へのエピソードとは? そして、現役を引退した今は食べることが何よりも楽しみと語る彼のパンケーキ愛にも迫ります。
第64回:上田桃子/渡邉彩香/三浦桃香(ゴルフ)
7月19日(金) 22:00~22:24
「スポーツを通じて“美”を提供したい」という思いを込めて今年から新設されたLPGAツアートーナメント『資生堂 アネッサ レディスオープン』。「才色健美」にも登場した3選手はこの大会をどう戦ったのか。番組出演時のインタビュー映像と密着取材を基に大会を振り返ります。