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若手の信頼厚い“優勝請負人”。
ロッテ細川亨がもたらす好循環。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/06/18 11:30
井上晴哉をベンチで迎える細川亨(中)。西武で2004年、'08年、ソフトバンクで'11年、'14年、'15年と通算5度の日本一を経験している。
「自主トレは足が速いやつとしか」
だからなのか、千葉ロッテの石垣島春季キャンプでも、細川は若手主力も悲鳴をあげるランメニューに183cm、103kgの大柄な体を揺らしながら必死に食らいついていった。細川がこう続ける。
「結局、野手のところに行っても面白くないんですよ。ランメニューにしたって足の速いやつが多いピッチャーとやった方が100%(自分が)置いて行かれるし、そこでちゃちゃを入れられたりしながら、(自分を)追い込むこともできるわけじゃないですか。だからこれまでも自主トレは足が速いやつとしかやってこなかったですし、野手だけでやるときも足が速いメンバーと一緒に走ることはずっとやってきましたね」
1週6試合、これを約半年間続ける。プロに入った多くの新人達がまず、この習慣にへばっていく。1年を戦う真の厳しさを、そこで初めて目の当たりにするわけだが、だからこそプロで生き抜くための基礎体力は重要だし、それが十分にあるからこそ技術練習やその他の練習にも身が入る。
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細川はこれまでのプロ生活でその重要性を何度となく感じて来たし、だからこそシーズン前の準備は一切の妥協をしない。
プロ18年目のプライドがそこから滲み出ていた。
若手の悪癖をすぐ見抜く。
今季は開幕こそファームで迎えたが、モチベーションを変えることなく高いところで維持してきた。グラウンドからはいつも細川の元気な声が聞こえてくるし、野球に対しても、人に対しても、謙虚で居続ける姿勢は、まさに若手の手本となれる存在だ。
もちろんプレー面でも若手の参考になることが多い。
ある日のイースタンリーグの試合では若手投手の一人が、変化球を投じた後のストレートを引っ掛け気味に投げてしまうという悪癖を露呈した。そうした傾向が出ることを、細川は一目で見抜いていたという。
入団4年目の柿沼友哉がこう証言する。
「もちろん(その投手に)そうした傾向があることは僕も気付いていましたけど、細川さんはそれを一目見ただけで見つけると言いますか、普段僕らが見ていない視点でも見ている方なので凄く勉強になりますし、自分達の引き出しを増やすことにも繋がっていると思いますね」