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田澤純一の充実したマイナー生活。
「日本でやれないルールは……」
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/05/30 17:00
田澤純一には「日本復帰」という選択肢はない。本人が望むかはともかく、日本球界にとっては大きな損失だ。
「飼い殺し」寸前の状態だった。
カブスが本当に「本人の準備が出来次第、メジャーに昇格させる」と考えているのなら、最初から彼は開幕ロースターに食い込んでいたし、そもそも自由契約にすらなっていない。
田澤がアリゾナ居残りを「無駄だったかな」と感じた理由のひとつは、若手相手に投げることで得るものが少ないからだった。実際、田澤はこの春、こんな経験をしている。
「どんどん初球から振ってくるし、こっちがやりたいことがあっても何もできないような状態だった。それでも球速とか回転数を測られているので、真っ直ぐを投げなきゃいけない。本来やりたいことは違う」
田澤がメジャー昇格のアピールにならない場所でのプレーを強いられた理由のひとつは、カブスはメジャーだけではなく、マイナーにも投手が溢れている状態だったからだ。
田澤よりも優先的に試したいマイナー選手が大勢いた。違う言い方をすれば、当時の田澤は「飼い殺し」になる寸前だった。
事実、4月や5月の上旬にカブスのトミー・ホトビー投手コーチに田澤のことを聞いてみると、「アリゾナで調整している」以上の言葉は出てこなかった。
徐々にカブスが田澤を気にし始めた。
ところが、田澤がマイナーに合流した後に話を聞くと、こんな言葉が返ってくるのだ。
「昔と違って、今は映像でマイナーの選手たちの姿を確認できるし、球速や回転数も計測しているから詳細なデータを得ることができる。
でも何よりも大きいのは、情報のResource(供給源)が増えたことだ。(AAA級アイオワの投手コーチ)ロッド・ニコルズとは頻繁に連絡を取り合っているし、この前までメジャーにいたテイラー・デイビス(捕手)にも話を聞くことができる。タズ(田澤)がすでに2イニングを抑えていることも分かっているが、結果だけではなく、そうなるに至った内容も把握できるようになった」
カブスが以前より、田澤の存在を気にし始めたと分かるのは、ホトビー投手コーチの次のような言葉からだ。
「彼の持ち球のレパートリーは、このチームの救援投手陣の中でもユニークなんだ。とんでもない速球を投げるわけではないが、カーブでストライクが取れるし、あのスプリットは今でも大きな武器となっている。彼がこれからいろんな状況で投げていけば、このチームに必要なのかどうかも、もっと鮮明になる」