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田澤純一の充実したマイナー生活。
「日本でやれないルールは……」
posted2019/05/30 17:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
ほんの少し――。
ほんの少しだけ、いい風が吹いていた。
新緑が目立つ5月17日のアイオワーアメリカ合衆国中西部の小型都市デモインは、ついさっきまで降っていた雨のため、気温が上がった午後3時頃には蒸し暑くなっていた。
田澤純一は、立派な州議会のビルが外野フェンスの向こうに見えるマイナーリーグ球場にいた。新たな出発の背番号である39を付けて。
マウンドの後ろ、やや登り坂になっているところから腰を溜めて投げる。左足一本で立ち、前に一旦右腕を伸ばし、そこから上体を一気に起こして、片足のまま投げる。
マイナー契約のキャンプ招待選手としてシカゴ・カブスにいた頃と同じ光景だった。
田澤の額から汗が滴り落ちる。わずかに吹いた風が、彼の青い練習着を揺らした。
カブスのAAAに合流してから1週間。
「(去年)エンゼルスの時に体に覚え込ませるのには2万回やれって言われたけど、それは一気にじゃなくて、毎日、少しずつやるということ。今日はこの種目を3種類、15回ずつやったらそれで終わり。そのかわり毎日やれよ、と。その日によって良い、悪いはもちろんあるから、毎日やることが大事だと」
体の使い方にこだわった動き。それを彼は、いつの頃からか毎日欠かさずやるようになったが、他の多くのトレーニング同様、リカバリーの時間も必要だと言う。
「その日やったことを、寝ている間に体が勝手に復習したりすることがあるから。今日やったドリルが体にインプットする時間になるから、リラックスして寝ることが大事。自分が今までやってなかった動きをあえてさせているので、その分、体に覚えさせてあげる時間が必要」
田澤がシカゴ・カブス傘下のAAA級マイナー、アイオワ・カブスに合流したのはほんの1週間前、5月11日のことだった。
翌日には初登板を果たし、14日にも登板して2回を無安打無失点、3三振無四球の好スタートを切っている。