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田澤純一の充実したマイナー生活。
「日本でやれないルールは……」 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2019/05/30 17:00

田澤純一の充実したマイナー生活。「日本でやれないルールは……」<Number Web> photograph by AFLO

田澤純一には「日本復帰」という選択肢はない。本人が望むかはともかく、日本球界にとっては大きな損失だ。

キャリアがあるからこそ、昇格ハードルは高い。

 田澤のメジャー昇格の可能性が一気に高まった、というつもりはない。

 それはレッドソックス時代、マイナーから這い上がった彼自身がよく分かっていることだ。

「やっとスタートラインに着いたという感じかな。ここでも初球から振ってくる打者はいるけど、球を見てきたりとか、駆け引きで勝負してくる打者もいる。そういうところがもう少しうまく、捕手を信じて投げられるようになればいい」

 田澤はメジャー歴7年を超えるベテランであり、一度メジャーに上げればマイナーには簡単に落とせない立場だ。怪我人や不調に陥った選手の代役としての「一時的な昇格」は(緊急事態を除いて)ほぼ100%有りえず、カブスが「シーズンの最後までメジャーで起用する」という決断をしなければ、メジャー昇格は難しい。

「そこは気にしてもしょうがないんじゃないですか?」と田澤は言う。

「キャンプで結果出したけど、クビになる時はなるんでね。ど真ん中投げても打者が振らない時もあれば、狙ったところに投げても打たれるときもある。ボールが手から離れたら後は、自分にはどうにもならないんで、マウンドに上がるまでの準備が大事。後はそれを上が評価してくれることを信じるしかない」

「日本でやれないルールはあるけど……」

 32歳のマイナーリーガー、田澤純一はこれからどこへ向かうのか。

「日本でやれないルールはあるけど、僕は最初にアメリカにきた時から、ずっとここでやっていくんだというつもりでいたから、後悔はないです。去年も2回クビ(自由契約)になって、今年もキャンプの途中でクビになってるけど、こういう経験もそうできることじゃない、人にできない良い経験をしていると思うんです」

 この春、カブスを自由契約になった時、田澤にはアメリカの他球団を探す選択肢はあったものの、「日本」という選択肢はなかった。

 今さら蒸し返すつもりはないが、大事なことなので、書いておく。

 田澤が2008年、日本プロ野球のドラフトを回避してアメリカのボストン・レッドソックスという選択をした時、日本のプロ野球機構は「将来のNPBを背負う優秀な選手が海外に流出するのを防ぐため、やむを得ない措置」として「(社会人野球出身者は)海外球団と選手契約した場合において、当該球団を退団後2年間(高卒選手の場合は3年間)の、NPB所属球団との契約を禁止する」(「」内は日本プロ野球選手会ホームページより抜粋)という罰則を設けた。

 その撤廃を求めている日本プロ野球選手会が、彼らのホームページで書いているように「プロ野球選手が、日本のプロ野球球団と契約し、年俸を得るという経済活動を著しく制限することから、独占禁止法上明らかに違法」だそうだ。

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